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キュン死しそう!(劉尚)


「っ…!」





虎牢関から出てきた鬼神こと呂布は、噂に違わぬ強さで雲長と翼徳でも攻撃を防ぐのが精一杯だった。
私は二人に下がっているよう言われたのだが、それでも義弟がやられるのを黙ってはいられぬと、私も二人に加勢すべく馬に跨がり走り出した。





「雲長、翼徳!」


「兄者!」


「私も加勢しよう」





私の声に振り返った二人の顔は何時もより余裕が無くて、それからも呂布の手強さが良くわかった。





「すまねぇ兄者、こいつ、ゴキブリ見たいにしぶとくてよ!」


「ゴキブリ……」


「ふん!また加勢か…。それにしても弱そうな奴が来たな」


「何を言う。兄者は弱くなど無い。ただ、少しだけ、その、運動神経が悪いだけだ」





呂布の言葉に雲長が必死に取り繕うが、なんだか逆に傷付いたのは気のせいではあるまい。
とはいえ、それを表にはださずに私は武器を構えた。





「我等三人の力が合わされば、幾ら鬼神呂布でも叶わな―」
「うっ!こ、この俺を倒すとは…!」





と、折角気を取り直しカッコ良く決めていた矢先、呂布はいきなり敗走した。





「あれ、兄者、何したんだ?もしかして覇気か?」


「い、いや、私は何も」





一体何故だろうかと三人で考えていると、私達の後ろから声が聞こえた。





「敵将、討ち取ったー!」





慌てて後ろを向くと、其処にはまだ幼い少女が弓を持って立っている。
彼女は私達の方へ走ってやって来たかと思うと、呂布の乗っていた赤兎馬に跨がった。





「そ、そなたは…」





思わず口を吐いて出てしまった言葉だったが、彼女は私の方を見て、笑顔で言った。





「私、孫尚香っていうの!貴方は?」


「尚香殿…。私は劉備、字を玄徳という」


「劉備、玄徳様ね」





私の名前を聞いた彼女、尚香殿は私の名前を笑顔つきで復唱してから颯爽と赤兎馬とともに敵本陣へと向かっていった。





「尚香、殿…」


「あ、兄者!?」




ああ、その笑顔、










キュン死しそう!














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