TOX短編
アルジュ♀(みや様リク)
学パロ。
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保健医とは言っても一応先生な訳で、職員室にも俺の机は有る。
基本的には保健室が職場だが、職員室に机が有るって事は職員室で仕事をする時も有るって事で。
そんな訳で、俺は保健室を空けて職員室に居た。
慣れないから落ち着かない空気の中で適当に仕事を片付けて、漸く俺の城に帰ろうと廊下を歩く。
見慣れた扉と、保健室のプレート。
それが近付くにつれ聞こえて来た声に、口許が緩んだ。
ジュードが居る。
単純なもんで俺は、それだけで気分が高揚する。
授業中の今、ジュードが俺のテリトリーに居るなんて。
何のつもりだ、漸く俺のものになる決心が付いたのか。
そこまで考えて、止まる。
「………」
声がするって事は、だ。
独り言じゃ無い限りは、声を発する理由なんて簡単だ。
誰かと会話をしているから。
辿り着いたドアを開けずに、音を立てない様ひっそりと立つ。
そうして漸く、ジュード以外の声を聞き取れた。
「大丈夫だよ、有難うマティスさん」
「でも、凄く腫れてるよ。待ってて、冷やすもの出すね」
男の声。
ジュードは保健委員だ、保健室の何処に何が有るかは完璧に把握している。
加えて医者志望のジュードに、俺も保健委員としての権利を越えて保健室の備品の使用を許可していた。
硝子戸が開く音がして、何やらごそごそと漁っているジュード。
冷やすと言ってたから、氷嚢でも出すつもりなんだろう。
「痛、っ」
「あ…ごめんね」
「うぅん。冷たくて気持ち良いよ」
「どうしよう、これじゃ戻っても授業は出られないよね。…スヴェント先生、戻って来ないかな…」
ジュードの口から出た俺の名前、それだけで高鳴る鼓動。
…ガキか、俺は。
今の“戻って来ないかな”は、怪我を正確に治療する人間が必要だから出た言葉で有って、俺自身を求めてる訳じゃ無い。
そんな事は解ってるのに、何でこんな嬉しいんだか。
「マティスさん、スヴェント先生と仲良いよね」
怪我をしたらしい男子生徒が、ぽつりと溢した。
一般生徒にもそう見られているのは少しまずいか。
だからと言ってジュードとの距離を空ける気は、更々無いが。
出逢いから今日まで、我慢に我慢を重ねて漸く近付いた距離だ。
寧ろ更に近付こうと思っているのに、退いて堪るか。
「そうかな。そうでも無いよ」
「でも、マティスさんしょっちゅう保健室に来てるだろ」
「保健委員だから。色々仕事だって任されるし」
「スヴェント先生もマティスさんには何か、優しいじゃん」
「僕だけじゃ無いと思うけど…。ミラとかレイアとも、よく話してるし」
「…本当に何でも無いの?」
「…?どういう意味?」
こうまで否定されるとちょっと落ち込むな。
一応本人には解り易くアプローチして来たつもりなのに。
保健委員なのを良い事に仕事任せたり、治療任せたり。
何もかも全部、ジュードを傍に置く時間を増やす為だ。
スキンシップも、セクハラと言われない程度に然り気無くしかし大胆に繰り返し、ジュードが俺に警戒心を抱かない様少しずつ。
その甲斐有って今のジュードは、他者の居ない状況なら敬語を使わない程度には、俺に心を開いている。
恋愛感情とまでは行かないにしろ、好意を感じてくれているのは間違い無いと、そう思っていたのだが。
まさか俺が思っていただけか?
本気で解って無さそうな声が不安だ。
そんな俺とは裏腹に、男子生徒の声は弾んだ。
「本当に何でも無いのか。良かった」
「何が?」
「…、あのさ、マティスさん……ジュード、さん。俺」
あ、何かやばい雰囲気。
随分と前からそんな展開だろうと思ってはいたがビンゴらしい。
告白するつもりだこいつ、ジュードに。
よりによって此所で。
俺の城で。
「俺、去年からずっとジュードさんの事見てた。今年同じクラスになれて凄く嬉しかったんだよ」
熱の隠った語り。
まずいな、これはまずい。
ジュードは告白されて即OKなんて軽い娘じゃ無いが、明らかな好意を言葉にされたら意識しちゃうタイプのピュアっ子だ。
意識イコール恋とはならないだろうが、意識自体が駄目だ認められない。
ジュードに意識されるのは、況してやジュードが恋するのは俺だけだ。
そのポジションは他の誰にも譲らない。
「俺、ジュードさんが…、…ジュードが…!」
「はーい、そこまで」
「!」
好き、その言葉は絶対に言わせない。
ガラガラと無駄に大きな音を立ててドアを開け、間延びした声で告白を遮る。
突然の乱入者に男子生徒は固まり、ジュードは此方に視線を寄越す。
瞬きを繰り返す大きな瞳にウインクで返してやると、ますます状況が解らないという顔をされてしまった。
「俺個人としては、男女交際禁止とか言うつもりは無いけどさ。授業中にこういうのは流石にな」
「スヴェント先生…」
「そんな元気が有るなら授業戻れるだろ。ほら」
「スヴェント先生、でも彼足を」
「マティスが診たんだろ?大丈夫だって。な」
「………」
見えた足首は確かに腫れて痛々しいが、ジュードの適切な処置のお陰でまぁどうにかなっている。
これなら歩くくらいは出来る筈だ。
言外に出て行けと命令すると、男子生徒は表情を強張らせて立ち上がる。
俺の言葉通り、授業中にするべき事では無かったと解っているんだろう。
「…すみません、失礼します」
「ああ。状況は弁えろよ」
それでも未だ痛むんだろう片足を少し引き摺りながら、保健室を出て行く男子生徒。
後を追うジュードの、その腕を掴もうと手を伸ばして、止まる。
行くなよジュード、好きだ。
…今それを言ったら最低だ、生徒は駄目で教師なら良いなんて、そんな筈は無い。
今は授業中、仕事中。
俺とジュードが対等でいられる時間は、今じゃ無いんだ。
「マティス」
「!はい」
よろける男子生徒を支える後ろ姿に声を掛ける。
直ぐに返って来たその声が、そのたった一言が。
俺に、俺だけに聴こえていたら良かったのに、なんて。
…ガキか、俺は。
「放課後、ちょっと来てくれ。話有る」
話をしよう。
授業中でも仕事中でも、教師でも生徒でも無い、只の俺とお前の時間で。
“俺”の言葉を、“お前”だけに
(もう一刻の猶予も無いから、多少強引だが仕方が無い)
(無理矢理意識させてやる)
(好きに、させてやる)
(お前の心には俺だけ居れば良い!)
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みや様リク、アル→ジュ♀でアルヴィン以外から告白されるジュード、です。
勝手に学パロにしてごめんなさいorz
告白…未遂…orz
女体化表記は無いですねすみませんorz
謝る事ばっかりだ/(^q^)\←
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