[携帯モード] [URL送信]

TOX短編
アルジュ♀+ガイ(紫苑様リク)
捏造設定注意。

――――――――











「正解!エリーゼは頭が良いのね」

知的美人とはまさにこういう人を言うのだろう。
エリーゼに笑い掛ける女性は、こくりと首を傾かせながら、眼鏡の奥の瞳を柔らかく緩ませた。

「それじゃあね、エリーゼ。…ジュード君も」
「…、はい。カーラさん」

その瞳が僕を一瞥し、直ぐに逸らされる。
ポニーテールを揺らしながら去る彼女の足取りには迷いが無い。
人混みに消えた姿に無性に縋りたくなって、名前を叫びそうになったけど。
拳を強く握って、止まる。
駄目だ。
僕は。

「行こうか、エリーゼ」
「…?ジュード、どうかしたんですか?」
「何か変な顔してるよー」

エリーゼの手を引いて、カーラさんが消えたのとは逆の方向へ歩き出す。
顔を覗き込む様にふわふわと飛び回るティポに、笑顔を向けて。

「…行こう」

グローブを着けていて良かった。
着けていなかったらきっと、爪で掌を傷付けてしまっていたから。






















「悪いな。これも仕事ってやつなのよ」

そんな顔で見るなよ。
信じられないとか、嘘でしょとか、何も言わないけどその眼が全部言ってる。

「アルヴィン。マクスウェルはカギを誰に託した?」
「巫女のイバルだ。今頃はニ・アケリアで大人しくしてるんじゃないか」

ディラックから得た情報はどうやら正しかったらしい。
ジュードが息を飲み、ミラの視線が刺さる。
カギがイバルの手に有るのなら、ラコルム街道で送った手紙も無駄にはならない。

「アル…どうして貴方が」
「よ、プレザ。久し振り」

プレザによればハ・ミルが侵攻され、住民の殺害と強制連行、新しいカギの存在。
何だ、ミラが奪ったカギが要らないなら、俺がこいつらを裏切る必要も無かったんじゃないか。
プレザももう少し早く来てくれれば良かったのに。
謁見の間から走り去る途中俺を振り返るジュードに、軽く手を振ってやる。
どうせあいつらはイル・ファンに向かう為にシャン・ドゥに戻るんだろう。
罪滅ぼしとは言わないが、逃げる時間くらいは稼いでやるか。

街中で激突したミラ様ご一行と四象刃。
壁に寄り掛かって、逃げるあいつらを見送る。
あいつらは5人、こっちは一国の軍隊、まともに後を追われれば取っ捕まるのは時間の問題だ。
山へ逃げたと偽の情報を掴ませて、兵士の目を背けさせる。
兵士が出払い、静まり返った謁見の間に残ったガイアスを改めて観察すると、燃える様な赤い瞳が俺を睨んでいるのに気付いた。

「…?なに、王様」

信念ブレブレな俺には、その真っ直ぐ射殺すみたいな視線は痛い。
居心地が悪くて軽い調子で返してもガイアスは何も言わず、ひたすら俺を睨み続けてる。
助けを求めてウィンガルを見ても、我関せずといった態度を崩さず、事態の解決には至らなかった。

…訳解んねぇこいつ。




















「以上2点を踏まえ、疑惑が有るんだが」
「ちょっと待って。何でアルヴィンがカーラさんと会った時の事知ってるの」
「お姫様が話してくれたよ、ジュードが変だったんですってな。それが無くても、俺が会った時の態度、いつも通りのつもりだったなら甘いぜ」
「………」

ミラがマクスウェルになり、ガイアスがア・ジュールとラ・シュガルを統べる王になり、断界殻が無くなった世界。
貿易と言えば聞こえは良いが端的に言えば小間使い、俺の仕事はそんなもんだ。
仕事としてローエンに呼ばれカン・バルクに来た俺と、源霊匣の研究経過を報告しにガイアスを訪ねて来たジュード。
ガイアス城前で鉢合わせた時、ずっと疑問に思っていた事を訊く絶好の機会だと思った。

「おたくさ、もしかして」

俺を見上げる表情が強張る。
未だ口に出してはいないが、恐らく俺の言わんとしている事が解っているのだろう。
そしてその反応、俺も口に出す迄も無く、この疑惑が疑惑では済まないのだと理解した。

「ガイアスの」

「ジュード!」

核心に触れる直前、重厚な音を立てて城門が開き、同時にジュードを呼ぶ声が響いた。
口調は堅い癖にやけに耽美なこの声色、間違え様が無い。
現れたガイアスは背後にローエンを従えて、荒々しい足取りで此方へ歩いて来る。
謁見待ちの一般人の列からざわめきが上がるが、それを意にも介さず名を呼んだジュードの腕を引き、抱え上げた。

「!ちょ、お前っ」
「が、ガイアス!」
「…“ガイアス”?」
「……っ」

ざわめきも一際大きくなる…そりゃそうだ。
いきなり現れた王様が、城前にいた白衣の少女を抱き上げたんだから、騒ぎたくもなる。
抱き上げられた張本人も焦った様子でガイアスを呼ぶが、ガイアスは眉間の皺をより深くしただけで下ろす様子は無い。
ジュードが呼んだ自分の名に疑問符を付けて返すと、ジュードは居心地悪そうに目を泳がせる。
そうして数秒の沈黙の後、小さく溜め息を吐き、口を開いた。
俺の疑惑に対する答えになる言葉を、紡ぐ為に。

「…下ろして…、“兄さん”」














「じゃあカーラさんとやらとも、」
「姉妹。…まさか会うなんて思わなかったよ…それも何回も」
「嬢ちゃんにバレたのが運の尽きだろ」

ちくちくぶすぶす、視線が刺さる。
ジュードを自分の膝の上に抱いて、ジュードの口から関係を語らせながら、ガイアスは始終俺に射殺すみたいな視線を送ってる。
…前にこの場所で感じた視線も、やっぱり殺気バリバリだったんだな。
あの時はかわいい妹に何やら慕われてるらしい俺が気に入らなくて、今は。

「俺は認めんぞ」
「別に認めて貰わなくても。ジュードはもう俺のだし?大体おたくら他人なんだろ、今」
「うん…、僕今ラ・シュガル国籍だしね」

ジュードが言うには、カーラと同じ理由でガイアスから離れた訳では無いそうだ。
ジュードは医者になりたかった。
以前イラート海停辺りで言っていたが、部族間抗争の激しいア・ジュールでは勉強などしていられない、というのが本当に本当の理由らしい。

「ラ・シュガルも俺が統治する今、国籍など意味の無い事だ。第一ジュード、お前は既に医師だろう。俺の元へ戻れ」
「無理だよ。カン・バルクとイル・ファンじゃ設備が雲泥の差だもん。研究者目線で言わせて貰うとね、悪いけど」
「どうせア・ジュールに来るならシャン・ドゥにしろよ。同棲しようぜ、そろそろ」
「シャン・ドゥなんてもっと有り得ないってば。同居したいならアルヴィンがイル・ファンに来て」
「その必要は無い。別れろ」
「へっ、残念だなぁ。俺リーゼ・マクシア人じゃねぇからおたくの命令聞く義理無いんだわ」

初めて睨まれた時から思ってたがこいつ、かなりジュードを溺愛してるっぽい。
まぁジュードは最強にかわいいし、俺も勿論溺愛してるし、気持ちはよぉく解るけど。
だからと言って俺が引いてやる必要は無いだろ。
こう言っちゃ何だが、生まれた瞬間から強制的に家族愛を育まなきゃならない兄妹と違って、俺はジュードの意思で選ばれて愛された存在なんだから。
兄妹の繋がりなんかよりずっと特別な筈だ。

「もう、兄さん落ち着いてよ。…源霊匣の普及が進めば、此方に戻れるから」
「ジュード…」
「でもそれは今じゃ無い。ミラとの約束、果たさせて…お願い」

ジュードは抱き締められて不自由な体を捻ってどうにか後ろを向き、ガイアスの顔を覗き込んでいる。
胸にぺたりと寄り掛かって至近距離で上目遣い、ガイアスの視界はさぞ素晴らしい事になっているだろう。
しかもその体勢でお願い、とか。
その破壊力を知ってるからこそ、…畜生羨ましい。

「…ミラも厄介事を残してくれたものだな」
「信じてくれたのは兄さんも一緒でしょう。嬉しかったんだよ、凄く」
「大切なお前が、俺を退けてまで追った理想なのだ。俺が見届けてやらなくては」
「うん。有難う、だいすき」

「………」

おい、何だこの空気。
今にもキスとかしそうな甘い空気。
ジュードお前、そんな頬染めて、だいすきとか言うな俺以外の男に。
お前の“だいすき”には肉親の情しか込もって無いかも知れないが、その言葉を受け取るガイアスの眼とか異常だぞ何か。

「ジュード!」
「?アルヴィン、なに…、」

ジュードの腕を掴んでガイアスから引き剥がして、抱き締めて。
俺の腕にすっぽりと収まるジュードの、艶々の前髪に被われたおでこに、音を立てて口付ける。
途端真っ赤になるジュード、…あぁ大丈夫、俺は愛されてる。
ガイアスとは全然違う意味で。

「ジュード、好きだぜ」
「あ、アル、ヴィン?」

突然の抱擁、キス、愛の囁き。
そのトリプルコンボは、いつまで経っても初なジュードを翻弄する。
へなへなと力が抜けていくジュードの躰を強く抱き締めながら、ちらりとガイアスへ視線を遣る。
どんな顔してるやら、苦虫噛み潰した様なってやつか?
それを見て大いににやけてやる、と、既に緩んだ口角を更に上げる準備をした、―――ら。

「……っ、うぉ!?」

突如出現した赤い刃。
一体いつ抜いたのか、ガイアスの愛刀が目の前に有った。
はらり、僅かに切られた前髪が散る。

「貴様…」
「てめぇ…」

赤い眼光と同じくぎらぎらと輝く刀。
もう完っ全に無理だな、俺はジュードのご家族と仲良くなんか出来ない。
そもそもする気なんか最初から無い。

「覇道滅封!!」
「レインバレット!!」

お互いが放つ技には純粋な殺意、只それだけ。

謁見の間の隅で俺達を見守るジュードとローエンは、兵士に城の修理を手配する様伝えて。
にこりと微笑み合った後、そっと、武器を構えた。













臥狼咆虎!!

タイダルウェイブ!!













(大体なぁ、おたくが妹離れ出来て無いからこうなるんだろ)
(親離れ出来ていない貴様に言われたくは無いな)
(あぁ!?何だよ!)
(マザコンに大切な妹を任せられるか。即刻別れろ)
(2人共私語禁止。正座時間延ばすよ)
(…すみません)
(…すまない)

(あぁ、修理費が嵩みますねぇ)
(いや、殆どおたくらが…)
(何か言った?)
(何でも無いです)














――――――――

紫苑様リク、ガイジュ兄妹でシスコンガイアスでアルジュ♀、です。
…旅要素とか女体化要素とか…色々薄くてすみません…orz
ローエンは城門からずっといたけど空気!←
ゲーム中の台詞とかはうろ覚えでフィーリングです、適当MAX!←

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!