TOX短編
アルジュ♀(匿名様リク)
「おかあさ、わぁっ!」
両手いっぱいに大きな紙袋を持った小さな女の子が、脚に突進して来た。
エリーゼより更に幼い女の子は、僕にぶつかって尻餅を付く。
荷物の所為で前が見えなかったんだろう。
何が起こったのか解っていない、ぽかんとした顔が可愛かった。
「大丈夫?ごめんね」
多分僕に非は無いけど、弾き飛ばしてしまったから、しゃがみ込んで謝罪する。
すると女の子は漸く事態を把握したのか、数度瞬きした後、にっこりと笑った。
「だいじょうぶ!ごめんなさいっ」
小さな手を掴んで立たせてやり、服に着いた埃を払う。
ありがとう、と頭を下げて、女の子は走って行った。
幼いのに礼儀正しい子だ。
「可愛い子だな」
一部始終を隣で見ていたアルヴィンが、何だかとても優しい声で言った。
僕も同じ事を思ったけど、アルヴィンが言うと何か違って聞こえる。
「あんな小さい子も射程範囲内?」
「…俺を何だと思ってんの、優等生」
心底心外だと言いたげな瞳がおかしくて、ちょっとだけ吹き出す。
何って、そんなの決まっている。
アルヴィンはアルヴィンだ。
「…可愛かったね」
「お、あんな小さい子供も射程範囲内?しかも百合」
「仕返しのつもり?」
「さぁね」
勿論そんなつもりじゃ無くて、純粋に、小さい子供って可愛いなぁって。
…僕とアルヴィンも、いつか、可愛くて堪らない子供と一緒に歩いたりするのかな…って。
「………」
「ジュード?」
「あ…、ううん、何でも」
一応僕達は恋人だし、そういう事もしてるし、…たまに避妊しなかったりって事も、有るけど。
現実的に考えた事って無かった。
僕とアルヴィンが将来を一緒に生きたとして、いつかはこどもをもうけたりするのかな。
お父さんお母さんって呼ばれて、2人の間で両手を繋いで、よちよち歩いて。
想像してみて、何だか凄く恥ずかしい気持ちになる。
まず僕とアルヴィンが結婚とか、何の根拠も約束も無いのに、先走り過ぎだ。
「こども、未だ早いよな」
「…、え」
降って湧いた近未来像みたいな想像を、頭を振って散らしていたら、アルヴィンに手を握られた。
同時に聞こえた言葉は、今しがた振り払った想像に対する答えみたいなもので。
心を読まれているのかと、どきっとしてしまった。
そんな筈は無いんだけど。
「うん、未だ早い」
アルヴィンは1人で納得したみたいに頷いて、僕の手を握る力を強くする。
早い、って。
無い、じゃ無くて、早い。
…いつかは…って思ってくれてるって事?
「そりゃ欲しいけどさ。ジュード似の女の子と、俺似の男の子。俺似の女の子はちょっとな…気持ち悪い、俺が」
「あ、アルヴィン、それって…」
「でもな、お前15だし。15で子育てとか流石に辛いよな」
「………」
「それに、暫くは俺の事だけ愛して欲しいなーと思うし、さ」
「…!」
え、何この展開。
アルヴィンが口にするのは、僕がアルヴィンの隣にいるのが前提の未来。
当たり前に隣にいて、当たり前にこどもがいて、当たり前に同じ時間を過ごす僕達。
これって、プロポーズ、されてる様なものじゃ。
しかも何か今、アルヴィン凄い事言った気がする。
こどもは欲しいけど俺だけ愛して、とか、言った?
な、なに、それ。
「ジュード子供好きだろ。こども出来たら、俺構って貰えなくなりそうだし。夜の営みだって気ィ遣いそうだし。それは困るよなぁ」
「アルヴィン、…」
「あと5年、な。…待ってて」
5年って、僕が成人するまで。
その考えは正解だったみたいで、アルヴィンの耳が赤くなってる。
それを見て僕も赤くなる、耳どころか顔全体が。
「かわいい、ジュード」
「……っ」
往来で頬に口付けられても、拒絶なんか出来なかった。
5年後。
将来。
こども。
僕の頭の中はそんな単語でいっぱいで、今にも爆発しそうだった。
いつかは届く確実なif
(ジュー子、ジュー美、ジュー奈)
(アル助、アル郎、アル太アル也…)
(どうしようアルヴィン、決まらないよ!)
(こどもは未だ早いって言ったろ!最速で5年後だ!)
(しかし酷いセンスだなジュード…!)
――――――――
匿名様リク、子供がいたらな〜なアルジュ♀、です。
アルヴィンパパは子供ばっか構うジュードママを面白く無いと思いそう。
暫くは2人っきりでイチャイチャして欲しいです。
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