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TOX短編
アルジュ+ガイ(hpp様リク)
ガイジュ要素有ります、…と言うかアルジュ要素があまり有りません。←
アルジュ+ガイの続き。

――――――――













違う。

触れられて最初に感じたのはそれだった。

流石リーゼ・マクシアを統べる王と言うべきか、背を預けたベッドは今まで利用したどのベッドより上等。

マットはふわふわふかふか、シーツだってさらさらで凄く肌触りが良い。

こんな状況で無ければ一瞬で眠りに付いてしまいそうだ。

そんな極上のベッドで、長身の恋人より更に大きくて逞しい人に組み敷かれる。

見上げて見えるのは茶髪じゃ無いし、触れて感じるのは革のコートじゃ無い。

やっぱり、全然違う。


「…ガイアスだなぁ」

「当然だ」

「うん。僕ってほんと、アルヴィンしか知らないんだって思い知った」


はっきり言えば不安だ、今僕を暴くのがアルヴィンじゃ無い事が。

アルヴィンの行動しか、アルヴィンの反応しか、アルヴィンの技術しか、僕は知らない。

例えば、襟を開かれて首筋を撫でられた時。

僕が擽ったさに首を竦めると、アルヴィンは小さく笑って其処に口付ける、いつも。

ガイアスはそうじゃ無くて、首を竦めた僕の頬を、安心させる様に撫でてくれた。

勿論それだけじゃ無い、色々違う部分は有る。

と言うか、同じ部分なんか1つも無かった。


「アルヴィンじゃ無い人に抱かれるってこういう事なんだ…。ちょっと怖いな」

「ならやめるか?俺は構わないが」

「うぅん、やめないで。怖いだけで、嫌じゃ無いみたいだから」

「…後から言われても止まらんぞ」

「頼んだのは僕だよ。大丈夫、抱いて」


本当に、ガイアスって優しい。

アルヴィンとは大違い。

きっと恋情では無いけどガイアスが僕に好意を抱いてくれてるのは絶対だし、僕も恋情では無いけどガイアスが大好きだ。

だから大丈夫、だと思う。

現にガイアスの大きな手が肌を滑り、僕の胸を撫でても、嫌悪は感じなかった。


「ん、…っ」

「随分と念入りに愛されている様だな」

「躰はね。…ふふ、ガイアス赤ちゃんみたい」


アルヴィンが沢山付けるキスマークを、ガイアスの指先が辿る。

薄い唇が硬さを持った突起を挟み吸い上げるその図が、母乳を求める赤ちゃんみたいに見えて、少し笑った。

赤子扱いされたのが気に入らなかったのか、ちょっと強く吸い付かれて息が上がる。

その瞬間から、赤子なんて可愛いものには見えなくなってしまった。


「あ…んっ」

「母乳が出るまで吸って欲しいか?」

「ガイアス、それ…や」

「後から言われても止まらんと、言ったぞ」

「ゃ、あっ…!」


ぎらぎらと光る紅い瞳には、情欲は欠片も見えない。

止まらんなんて言うけど、多分ガイアスは少しも興奮なんかして無いんだろう。

大切な僕が言い出した我儘だから、きっと、親みたいな気持ちで、聞いてやろうって。

それを解っていて尚、アルヴィンに当て付ける為だけにガイアスに抱かれようとする僕は、凄く馬鹿だ。

解ってるけど、僕にだって自尊心くらい有る。

今更止められない、って言うか止めて堪るか。

ガイアスの唇が段々と下って行き、臍の周りを軽く舐めて、更に下へ。

ズボンのベルトに手を掛けられて、…流石に、肩が跳ねた。

ガイアスもそれに気付いたんだろう、一瞬だけ目が合ったけど、何も言われずにまた目線が落ちる。

あぁやっぱり、僕の気持ちを汲んでくれるんだ。

続けようとしてくれる。


「ガイアス、好きだよ」

「…俺もだ、ジュード」


好きだよ、好き。

優しくて、あったかくて、僕を大切にしてくれて。

本当は公務だって有る筈なのに僕を優先してこんな事にまで付き合ってくれるガイアスが、好きだ。

…どうしてこの気持ちは、恋じゃ無いんだろう。

アルヴィンじゃ無くガイアスに恋をしていたら、全てが上手く行った様な気がする。

恋人じゃ無い僕をこんなに大切にしてくれるんだから、いざ恋人になったらこれ以上の待遇になる事は間違い無いだろうし。

僕は一介の医者で研究者、ガイアスは世界の王、身分の差は勿論有るけど。

それでも、僕とアルヴィンの関係よりは遥かに安定した関係になる筈だ。

そこまで考えられるのに。


「…ガイアス」

「…何だ」

「これ、浮気なんだよね。僕、アルヴィンが好きなんだ」

「………」

「大好きなガイアスに抱かれてても、アルヴィンが好きだって思っちゃうんだ。馬鹿だね」


本命はアルヴィン、好きなのはアルヴィン、恋人は、アルヴィン。

駄目だ、変わらない。

あんな駄目男捨てちゃって、ガイアスに囲ってって頼めば、僕は不安とは無縁の幸せを掴めるのに。


「それで良い」


ちゅ、

ガイアスは僕の瞼にキスをして、解いたベルトをまた留めてくれた。

同時に、扉の外に人の気配を感じる。


「何か有ったのか」

「は!門兵から伝令です!」

「門兵…」


扉の外には警備の兵が立っているらしく、何やら慌てた様子で話し始めた。

門兵って事は、城の入口で何かが有ったんだ。

そしてこのタイミング、何が有ったかは何とも解り易かった。


「城内に賊が侵入した模様です!身の丈程の巨大な剣と、エレンピオス兵が装備していた銃と同質と思われる武器を所持しているらしく、」


ほら、大正解。

と言うかその賊を此所に導いたのは僕だ。

真剣に賊の特徴を説明する兵士に、少し申し訳無い気分になった。


「賊はジュード様の名を叫んでいるらしく、ジュード様の警護をと思い参りました」

「此所は良い、下がれ。その男には手を出すな」

「は、…ですが」

「一般兵ではその男は止められん。負傷者を増やすだけだ」


ジュードは俺が守る。

ガイアスがそう言うと、兵士は失礼致しますと言って離れた。

ガイアス、それ凄い殺し文句。


「思ったより早かったな、味見しか出来なかった」

「別に捕まえても良いよ?何なら僕が捕縛に出ようか」

「いや、この部屋に踏み込ませた方が都合が良いだろう」

「そうだね、じゃあ待とう」


ガイアスの大きくて優しい手が、僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。

改めてベッドに押し倒されても、もう怖いとか思わなかった。

これ以上先には進まないからとか、そういう事じゃ無くて、解ったから。

僕には、最初から最後までアルヴィンしかいないんだって事が。


「どんな顔するかな、アルヴィン。イバル張りにジャンピング土下座くらいしてくれないかなぁ」

「…哀れな奴だ」


本気で哀れそうな目をするガイアス。

でも本当に哀れなのは僕なんだよ?

あんな浮気性で胡散臭くてダメダメな最低男がいないと、生きていけなくなっちゃったんだから。


遠くからアルヴィンの声がする。

僕の名前を叫びながら、段々と近付いて来る。

純潔か、とか言ってるけど、他の女抱きまくってるアルヴィンにそんな事心配されたく無いなぁ。


「ジュードぉぉお!!!」


「じゃ、上手くやってね、ガイアス?」

「お前もだ、ジュード。精々善がってみせろ」


豪奢な扉が開くまで、あと5秒。

見詰めた紅い瞳には、幸せそうに笑う僕が映っていた。














なんだ、僕はとっくに幸せだったのか













(僕が結局アルヴィンを1番と思う様に)
(アルヴィンも結局僕を1番と思っているんだろう)
(だからと言って浮気は許さないけど?)

(さぁアルヴィン、どう謝ってくれるつもりかな?)
(僕を納得させられる様、全身全霊で謝罪してね!)













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hpp様リクエスト、短編のアルジュ+ガイの続き、です。
…恐らく求めて下さった“続き”とはこういう事では無かったのだろうな…と今更思います。←
結局アルヴィンの出番が無くてごめんなさい。←

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あきゅろす。
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