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温度差。
夜のまち
  

 欲しかったCDも買って、ついでに本屋で参考書を物色して、いい時間になったから夕御飯も済ませて。

 さて、寮に帰ろうか。という時に、学人が『急用が出来た』と言った。

「先に帰っていてくれる?」
「うん」
 わかった。と返すと、学人は急いだように去っていく。

 携帯気にしてたから、恋人のとこかな?
 にしてはいつもの幸せオーラじゃなかったけど。



「うーん……。どうしようかな…」
 なんとなくこのまま寮に帰るのは味気なくて、キョロキョロ辺りを見回す。

 遊び疲れて眠っちゃいたい気分。
 一人だと、また考え込んじゃうから。
「何も考えたくない……」
 無理だって解ってて呟いてみる。

「…………はぁ…」

 自分で自分が嫌になる。


『メール―――慧さんから』

 忘れようって思ってるくせに、慧から メールが届いて嬉しいなんて。

「……………」
 ヤバい。また泣きそう。
 ボク、絶対涙腺おかしくなってる。
 嬉しいのと、苦しいのとが一緒になって、胸が痛い。


 疲れたな。

 もうなにも考えたくない。

「疲れた…………」
 ボクはしゃがみこんだ。
 雪はとっくに雨に変わってて、たくさんの人が踏んだコンクリートは泥でグチャグチャになってる。


 なんか前もこんなことあったな。

 雨が降ってて、夜の繁華街でしゃがみこんで。

『具合悪いのか?』
「どうした? 具合悪いの?」

 頭の中の声と、現実で聞こえる声が重なった。

 顔を上げて声のした方に視線をやると、知らない男の人がボクを覗き込んでいた。

「別に」
 短くそう答えるけど、相手は屈んで間近に顔を覗き込んでくる。
 なんかやな感じ。視線が気持ち悪い。

「まぁまぁ、ちょっとそこで休んでこうよ」
 そのまま強引に腕を引かれて連れていかれてしまう。

 抗議しても聞く耳を持ってないのか、どんどん引っ張ってかれる。
 腕を掴む力が思いのほか強くて逃げるに逃げられなかった。

  

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