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温度差。
決意
  

 好きだと自覚したところでどうなるわけでもない。

 幹也にはもう恋人がいるんだから。

「うざったい」
 バッサリとなんの躊躇いもなく優(スグル)が言う。
「うざっ……て、お前なぁ」
 事の経緯を話して一番に浴びせられる言葉が『うざい』……流石に傷付く。
「恋人がいようがいなかろうが好きは好きでいいじゃん。うじうじとうざったい」
 また言った……

「で、諦めるの?」
「諦めるもなにも…」
「相手に恋人が出来たからってあっさり諦めるの。1ヶ月以上もしつこく連絡はするのに」
 なんだよ、やけにつっかかるな。

「だって仕様がないだろ」
「仕様がないで済ませられる程度の気持ちなんだ?」
「お前何が言いたいわけ?」
 なんか段々むかついてきて、ついキツい言い方になる。

「……人ってさ、中途半端で諦めると後悔ばっかで引きずっちゃうんだよ。『あの時ああしてれば』とか、『もっとこうだったら』とか」

「?」
「慧はそれでいいの? そんなふうに思ったまま終わりにしちゃっていいの?」
「…………」
 今のままの状態で、納得出来るの? と優は言う。


 俺は優に幹也の事を話すのは(名前も男だってことも伏せて話したが)愚痴程度の気持ちだったんだ。
 でもこいつは、その事を真剣に考えてくれてたらしい。

(んな真面目に返されると思ってなかった)
 適当な付き合い方しかしてこなかった俺は、本音で話し合うとか経験したことがなくて戸惑ってしまう。
 でも悪い気はしなかった。


「絶対無理だって端から解ってても、全力でぶつかって砕けたんだったら、案外すっきりするかもよ」

 すっきり、か。
「…………そうかもな」
 うじうじしたって、それこそ何にもならない。
「ちゃんと告白して、綺麗さっぱり振られてきなよ」
 その方がこうしてるよりずっといいと思うよ。と優が励ますように言った。

「俺………あいつに好きだって言う」
 会ってちゃんと言いたい。

 そうすれば、何かしらの踏ん切りが着きそうな気がするから。

「自棄酒くらいは付き合うよ」
 にっ、と笑って優が言う。
「おう」


 せめて後悔のないように。


 俺は振られに行く。

  

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