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温度差。
好きじゃない
    
    
「好きです!」

 放課後、体育館へ続く渡り廊下で告白された。


「……ごめんね。今そういうの考えられなくて」
「いいんです。言いたかっただけなんでっ」

 それじゃ。とその生徒は去っていく。

 言いたかっただけ、ね…
 それってどういう心境なんだろ。

 ボクなんて、その言葉を胸の奥で思うだけでも苦しくてたまらないのに。




「告白するのって勇気いるよねぇ」
 寮のベッドでごろごろしながらボクは呟く。

「…なんだ急に―――わっ!」
 椅子に座って本を読んでいた学人(マナト)をベッドに引っ張って倒した。

「痛い。何するんだ」
 学人が抗議するけど、ボクは無視してぎゅうっとしがみつく。
「幹也?」

 好き。

 どうして皆、好きと言えるんだろ。
 叶うはずないってわかってるのに。

『言いたかっただけなんでっ』

 言っても何にもならないってわかってるのに?

「学人は好きって言うときどんな気持ちになる?」
「は? なんだ一体」
「好きって言うのって、どんな気持ちかな?」


 くっついたところから学人の体温が伝わってくる。
 その温もりに、何でか涙が出そうになった。
「……それはあの慧っていう人に言いたいのか?」

 学人の口から慧の名が出て、ボクは小さく息を呑む。

「なんで慧なの」
「好きなんだろ?」
「違うよ」
 ボクは否定した。

「慧なんてキライ」

 好きじゃない。
 そう言ったけど、それが本心じゃないことくらい学人はわかってる。

「嘘つき」
 学人は少し怒ったように言う。

「好きじゃないなら、なんで泣くんだ」

 怒ったような言葉とは反対に、ボクの頭を撫でる掌は優しかった。


 ボクは学人の胸の中で、声を出さずに暫く泣いた。

    

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