温度差。
潮時
「っ…あ、んんっ」
狭い車の中にボクの声が響く。
人通りのめったにない、半分山の中と言ってしまっていいような場所でボク達は抱き合ってた。
「気持ちイイ?」
ボクを抱く男に訊かれてこくこくと頷いた。
暗闇の中で聞く彼の低めの声にほっと安心感を感じて、ボクはその背に腕を回してぎゅっと抱きついた。
「――あっ、やぁっ、け……いっ、そこ…だ……め」
慧(ケイ)のがいいところに当たって、ボクは背を反らして喘ぐ。
慧とするの、気持ちイイよ?
けどね。
狭い車の中で、身体が自由に動かせないのがもどかしい。
ボク達がSEXするのは、いつも車の中とか、名前も知らない公園とか。
―――つまり一度も『部屋』という部屋でした事がない。
ボクは寮生だから、部屋でするとなると、慧の部屋か、……ラブホ。
(でも慧、ラブホ嫌がるからなぁ)
かといって慧の部屋も無理な気がするし。
「幹也(ミキヤ)、何考えてる?」
「んっ……な、にって?」
「何か別の事考えてんだろ」
そう言うなり、面白くなさそうに動きを激しくしてくる。
「ちょっ…んんっ」
奥まで突かれて、あまりの気持ち良さに身体がびくん。って痙攣する。
「んあぁっ、や、イ…ク。い…あ、あ、あン……あっ…あ――っ!」
慧の背中にしがみついて、ボクは達した。
何考えてるかって?
『そろそろ潮時かな』
って。
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