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ハトアリ.クロアリ小話
視線4
「…で、耳も生えて無くて眼鏡も掛けて無い」
「お姉さんより年下でも無いボスを
何で、あんなに見てるの?」
誤魔化しきれなかったか…
二人を見つめ、頭の中でどう言おうと悩む。
「前に、お世話になっていた家庭教師の先生と同じ顔をしてるのに
性格が全く違うから、つい気になって」
嘘では無い
真実でも無いけど。
ココは全然知らない世界で
私の居た所には、双子や皆はいないのかもしれないが
昔、付き合った人に迷惑をかけたくない。
苦い、若気の至りと思いたくなる思い出なのだ。
「ボスと、うり二つなの?双子じゃないよね」
「その人も紅茶で出来てて、面倒くさがりだった?」
興味深く問われ苦笑しながら頭を左右に振る。
「双子じゃないわよ。
それに、勤勉で真面目で優しい先生だったわ」
そう
優し過ぎる程に優しい
…こんな風に離れて分かる。
多分、彼は目で、全身で好きです。
と、言って来る生徒を無下に出来なかったんだろう。
私が、甘えて来る双子を容認してしまっている様に。
思い出せば、恥ずかしさに身悶える。
私は、恋にも他人との親密な距離の取り方
にも、馴れてなかった。
学校に行った事が無いままに
金銭的不自由も無く、優しく聡明な姉に守られて。
分別ある年頃で、ちゃんと出来てるつもりで、出来てなかった。
手を握られ、我に返る

気づけば周りを見ずに深くまで考えるのは
私の悪い癖だ。
「ボスより、僕等の方がハンサムだと思うよ」
「成分が紅茶でも無いし、僕等は誰よりお姉さんが好きだし」
お姉さん以外を好きになったりしないし。
どちらの言葉だったのか、見分けられなかった
それに二人の顔を見つめる。

「大好き。お姉さん」
「僕等の特別になって。僕等お姉さんの恋人になりたい」
二人は私の手を握ったまま
普段と違い、優しく静かに話しかけて来る。
「…私、二人共がココで一番好き」
いつか、帰らないままに仕舞った引き出しの中
小さなガラス瓶を、気にならなくなるだろうか
私は、私の為にハートの国に残り
本意でなく、クローバーの国へ移ってしまった。
ココに来た時から、一緒にいる人達の中でも
どんどん近くなる
ディーとダム。
私は、傍から見たら何でも無いかもしれない事を
ぐだぐだ悩むし
際限なく落ち込んでいるけど。
貴方達といると、記憶したまま悩まずに済む時間が増えて
それは私を安心させ、身の内を苛まない
それが、どんなにすごい事か。
「きっと、明日からはブラッドじゃなく
ディーとダムを見る様になるわね」
悪戯っぽく笑って見せる。
「それより僕等が、お姉さんを見つける方が早いよ」
「だって僕等の方が、お姉さんを大好きなんだから」
二人の笑顔に、そうね。と笑顔で返す。
私が、ブラッドを見るより早く
二人が私に抱きついて来て
きっとディーとダムしか見えなくなる。
明日からは、きっとそうなる。




end

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