GIFT
空の彼方(初ツナ)
並盛町に流れる川。
正式名称は『一級河川黒曜川』といい、その名の通りとなり町から流れてくる川だ。
その河川敷、陽も暮れたので人気のないそこに、ふたりはいた。
【空の彼方】
空はどこまでも高く遠く。
そして『大空』たる二人は並んで、やわい若草の中に寝ころんでいた。
「綱吉、綱吉」
「ん、なに?」
ごろり、傍らでジョットが寝返りを打った。イタリア人たるものシエスタを欠かしてなるものか、と昼寝していた彼だが、ようやく起きたご様子。
「あれは、なんだ」
「あれ・・・ああ、焼き芋屋さんですよ」
昼寝から目覚めたきっかけは石焼き芋屋の歌だったようだ。
「ヤキイモ」
「凄い。食べ物の名前だけは理解するの早い」
綱吉は目を輝かせたジョットを横目でちらりとみて、曖昧に笑みを作る。
今日も今日とてセコーンドに力づくでリングの間を押しつけたらしい困った人は、何かに期待した眼差しで綱吉の横顔を見つめていた。
「俺、お金持ってない」
「二世に持たされた」
ぐいぐいとア○パ○マンの財布を押しつけられる。
しかも首から下げるタイプ、開くとお札がぎゅうぎゅうだった。
「(セコーンド・・・)」
せめてピカチ○ウにしてあげて欲しかった、なんて思いながら立ち上がる。
空は赤らみ、確かに少し寒い。
「いきましょか」
「うむ」
ジョットは微笑んで立ち上がった。
綱吉の手を掴み、財布を持って前進。
これでも彼は、マフィア創世期に一大ファミリーを作り上げた辣腕。
今更ながら、(セコーンドに)頭が下がる今日このごろだ。
「いしやーきぃも、おいも」
一度聞いたきりの歌をご機嫌に歌いながら、ジョットは交差点を曲がるトラックに声をかけた。
「十本!」
「えっ」
あんたどんだけ食べる気だ、とつっこみかけ、やめた。
「二世たちに、お土産だ」
「・・・はい。」
この間も駄菓子屋全種買い占めていたのを思い出したから。
いくら天然だろうとどこまでも広く深い、空にふさわしいひと。
抱えきれないだけの石焼き芋を紙袋に入れてもらい、二人はベンチに腰掛けることにした。
「あつい」
「きをつけて」
素手でぐっと焼き芋を掴んだジョットが悲鳴をあげる。綱吉はふうふうと息を吹いてさましながら、注意を促した。
「むぅ」
「うを」
綱吉は面食らった。
・・・グローブを装着したよ、この人!?
「死ぬ気の炎でも耐えるからな」
「ジョット・・・」
ツッコミの入れどころが満載過ぎてあきらめた。
グローブをして、黄金色の断面にかじりつくジョット。
「ん、まい」
「よかったよかった」
はふはふいいながら、ジョットの顔が幸せそうに微笑んで。
綱吉もつられて、へにゃりと笑った。
後日。
いたく石焼き芋を気に入った歴代ドンボンゴレたちがおのおのの死ぬ気の炎で焼き芋を作ろうと多数のさつまいもを犠牲にしているとセコーンドから聞き、持てるだけの焼き芋とレシピを持ってリングの間に急ぐ綱吉の姿があったそうな。
ー・ー・ー・ー・ー・
うちのジョットさんはこんな人です(笑)
最後になりますが素敵企画に参加させていただきありがとうございました!
空色パルチザン
結城七瀬
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