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友達。
勤務、学校あるいは志などをともにしていて、同等の相手として交わっている人。
…違う。そもそも同等の相手として交わってるってなんだ?
わからねえ…。
俺は辞書の薄い紙をぱらりと捲り、次の項を探す。
親友。
仲がいい友人。打ち解けて付き合っている友達。
絶対違う。即答で言える。
そもそも友達の定義に当てはまらないんだから、その上級ランクに行くはずがない。これじゃない。
悪友。
交際して身のためにならない友人。
これだ。そうだ。これに違いない。
俺は心の中でそう確信すると、こっそり頷いた。あいつとの関係を的確に表現するならこれしかない。
「…か」
そもそも価値観とか、趣味とか、見事なまでに合わないんだ、俺たちは。
「さか」
何だ? うっせーな。俺は今調べ物してんだよ。忙しいの。
「んだよ…うるせ…」
しっしっ、と言わんばかりに片手を振り上げて、俺は全体に落ちている暗い影に気がついた。影が落ちてるということは、誰かが傍に立っているということだ。
誰だよ。今は授業中なんだぜ? 立ち歩いたりしたら学級崩壊とかで又騒がれんじゃねーか。座ってろよ。
「うるさいとはいい身分だな、久坂」
その低いトーンの聞き覚えのある声に、いやがおうなくある人物の顔が思い浮かんだ。
授業中に俺の傍に気配もなく簡単に忍び寄れる忍者のような人物、教室を徘徊出来る人物。
または俺の成績を自由自在にできる人物。
「あ、せんせい…」
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