■入学 鏡の前でネクタイを締めた。 何回か練習したから、結構上手にできたと思う。 卸したてのブレザーと制服を来て、俺は父親と母親にしばらくの別れを告げた。 『その力を、人のために使うんだぞ。』 「わかってるって!」 靴紐を、きゅっと締めた。新しい革靴の匂いがする。 「じゃあ、行って来ます。」 「うはー。ここが正十字学園か!」 父親に勧められてエクソシストになるために、俺はこの正十字学園に入学した。 なんとも立派な門に建物。まるでここが一つの都市のようだ。学校の外にでなくとも、全て敷地内に必要なものは揃っている。 新入生はまず入学式に出席しなければならないのだが、講堂はどこだろうか。こう広くては探し出すのも困難だ。 お上りさんのように、立派な建物を見上げながら歩いていると、ドンっと2人組の男の子の背中にぶつかってしまった。 「すみません。前見てなくて・・・」 「ああ、大丈夫ですよ。ていうか兄さん、そっちじゃないから。 「え、うっそ!」 振り返った2人組は、片方はメガネをかけていたが、まったくそっくりな顔をしていた。どうやら兄弟のようだ。2人とも、パリッと卸したてのブレザーを着こなしている。 「あの、講堂はどっちかわかる?」 すると、メガネの方が 「講堂なら向こうですよ。僕らもいくんで、ついて来てください。」 「そうなんだ。ありがとう。」 取り合えず、クラスはちがうかもしれないけど、いい奴も多そうでよかった。と、安心した。 [次へ#] [戻る] |