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BASARA夢小説
闇夜
「Shit!オレとした事が…!」
月も無い、漆黒の闇のなか。
闇に溶ける黒布を身にまとい、六爪の刀を両脇に差した武人が、馬を走らせる。
身体に傷を負い、馬の走った後には血痕が滴っていた。

「森の中なら巻けると思ったが…簡単には行かねぇな。」

カキンッ!と飛んできた苦無を叩き落す。
男は数人の忍に追われ、命を狙われていた。

忍が、馬の尻に苦無を突き刺す。
痛みに驚いた馬は、悲鳴の様な唸り声を上げ転んでしまった。
男は勢い良く放り出され、受身をとりすっくと立ち上がる。

そして、闇夜を雷で照らす、六爪の刀を抜いた。

「ちぃーとおイタが過ぎたようだな。見せてやるぜ、Are you ready?」

木々の間を飛び回ってる忍を睨みつけて、男の目がギラリと闇夜に光る。
木の上では忍が様子を伺いつつ、ジリジリと距離を詰めてくる。
そして忍達が、今まさに飛び掛ろうとした、その時。

一陣の強烈な風が木々の間を通り過ぎ、忍は驚いて動けなくなった。
そして風に乗って、忍達のいる木々の上部に、カカカカッと何かが刺さる。忍達はたまらず逃げ出した。

「What's up?これは…!?」

無数の羽のようなものが、木々に刺さっていた。
そして先程まで忍がいた木の上に、バサッバサッと音を立てて、何かが降り立った。
雲の隙間から、月明かりがふわりと流れ落ちる。

「主よ。大丈夫か?」

若い女の声。月明かりの逆光で顔は見えない。
ただ、背中に何かがついてるのがわかった。翼にも見える。

「助けてくれた事には礼を言うが、助けてなんて言ってないぜ。」

男は六爪の刀を、出番がなかったと残念そうに鞘に収める。

「そうだったか。それは失礼した。主は武人とお見受けするが、見たこと無い顔だの?なぜ武田の領内にいる?」
「顔も見えない相手に名乗る気はねえ。相手に名乗らせる前に、まず自分から名乗ったらどうだ?」
「主の言うことももっともだ。これは失礼した。」

バサッと音がなる。月明かりに、背中の翼のようなものが広げられ、
ふわり。と男の前に降り立った。一瞬、男は天女が降りてきた様だと思った。

「私は凛。天狗である。」

凛の背中についていたのは、本物の翼だった。

「Oh, Coolなモノを背中につけてやがんな。天狗なんて本当にいたのか。」
「お主もあまり驚いてないようだな…。」
「Hun?驚く必要が何処にある?」

此の男も、天狗を見てもそんなに驚きはしていない。最近の若者は神経が太いのだろうか…と
凛はちょっとだけ存在意義を見失いそうになった。

「ま…まぁイイ。主の名前は?」
「オレは、」

男は黒い布をバサリと床に落とす。美しい青い衣が現れた。

「オレは奥州筆頭、伊達政宗。You see?」
「伊達政宗…もしかして、輝宗の息子かの?」
「オヤジを知ってるのか?」
「まぁ、昔少しな。」

凛が得意そうにフフン。と鼻を鳴らす。

「話は戻るが、なぜこんな場所にいる?」
「武田に用があって来た。急に来たから、武田の忍がどっかの敵と勘違いしたらしい。」
「なんつー無茶なことを…城は?」
「影武者と小十郎が守ってるから大丈夫だろ。」
「付き人はいないのか?」
「いたが、忍に追い回されてバラバラになっちまった。って言ってもオレは要らないって言ったんだけどな。」
「ふむ…探しておこう。」
「見かけたら、奥州に帰るように伝えておいてくれ。」

凛は、まったくもって無茶なことをする男だと思った。それがまた面白くもあるのだが。

「さて、オレは武田の館に向かうか。」
「その馬でか…?」

見ると、馬はぐったりと横になっていた。どうやら相当長い距離を走っていたようだ。

「…」
「私もこれから武田の屋敷に向かうが、良かったら一緒に行くか?」
「Oh!そりゃ助かるぜ!で、馬は何処だ?」

キョロキョロと当たりを見回す政宗。それを見た凛が、ちょんちょんっ、と肩を叩く。

「ここだここ。私の背中に何がついてる?」
「…Really?」



「Ya-ha-!!こいつは気持ちいいゼー!」
「それは何よりだ!って、あまり暴れないでくれ!」
「悪ィ悪ィ。スッゲー気持ちイイ!」

凛の両手をしっかり握り、ぶら下がるように政宗は
空中遊泳を楽しんでいた。月明かりに照らされた森が美しく、
風を切るように飛ぶのが気持ちよい。

「館がみえてきたぞ!」
「OK!上から見るとあんなん何だなあ。」

二人は、すっかり雲がなくなった月夜を、優雅に飛び越えた。

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