愛に走るアナタを追うのは私 「璃音は彼女の部屋に泊まるんですよね。」 「うん、たまにはゆっくり寝たいからね。」 「確かに、ここじゃ無理そうですね。」 半おばさんがどうしても一晩泊まってほしいと言うので、ベッドがある寝室に布団を三人分敷かれた。私は男ばかりじゃさすがに…というおばさんと旬麗さんの言葉に甘え、旬麗さんの部屋に布団を用意してもらった。 「なあ八戒、いい加減教えてよ。前から悟浄が捜してる…ジエンってのは何者なんだ?」 悟空は、私が手伝いをしている間に聞いた話に出てきたジエンという名前に悟浄さんが反応したことで、今まで気になっていた疑問を口にした。 兄ははぐらかそうとした。だが秘密が嫌いな悟空があまりにも子供のように拗ねるので、仕方なさ気に話し出した。 ジエン…それは悟浄さんが八歳の時から行方不明の、命の恩人であり腹違いの兄である沙爾燕。 彼は本妻の子で純血の妖怪。悟浄さんは妖怪と人間との間に生まれた混血児…禁忌の子供。でも、本妻に殺されかけていた悟浄さんを彼は救ったのだ。弟を可愛がっていた彼は、実の母親を殺して。 朝、旬麗について洗濯に行く途中に噂話を聞いた。西の森で人を襲った妖怪、それが爾燕だったのだと。 耳にしてしまった旬麗さんは森へと走り出した。私は追い掛け、森に入った。 「旬麗さん待って!」 「でも、でも爾燕が…。どこにいるの爾燕!」 本当に、愛する人以外は頭にないんだ。自分が危険な目に合うかもしれないなんて、どうでもいいくらいに。 この人も、あの人だって…。 「兄さん…」 [*前へ][次へ#] [戻る] |