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小説
V


山本と獄寺くんに一言言いおきゆっくりと、しかし確実に彼に近付く。そして一呼吸をして話し掛ける。
彼に話し掛ける時はいまだ臆になってしまうのだ。(ボスのくせに、とか言うな!)

「恭弥さん、そろそろ戻りましょうか?」

そう言うと彼は俺を睨むように見上げた。何か悪い事でも言ったのかと、一歩たじろいだが思い浮かぶことは無い。しばらくの沈黙が過ぎたあと彼は急に立ち上がった
かと思えば俺の手を掴んですたすたと歩く。足取りはフラついてはおらず至って普通だった。あれだけの量を飲んでいたのだから少しぐらい千鳥足になっていても可笑
しくは無い筈なのに…それは俺が酒に弱いからそう思っているだけなのか。
でも、この量は。

(もしかして酒豪?)

彼ならあり得る話だ。
口には出さず一人で納得しながら、彼に手を引かれるままホールを後にした。

部屋に着くと彼は着ていたジャケットとウェストコートを脱ぎ捨てた。ネクタイを軽く緩め、ソファにどかり、と座り込むと大きくため息を吐いた。あの人混みだ、た
だでさえ群れる事を嫌う彼なのだから無理もない。

でも今日はちゃんと大人しくしていてくれた。凄く感動。

「綱吉」
「はい」



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