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縁切りの神様
二兎を追う者は一兎をも得ずB



一方、部屋の主である宗貞はというと―――




「はぁ‥‥…」

未だに己の欲望と葛藤していた。



「一つ屋根の下というのも考え物だな」


家柄のせいなのか

基本的にはストイックで女性関係にも同年代に比べれば滅法淡白な宗貞だが―――




「コレでは気軽に処理する事もままならないではないか」

逆に性的な事に慣れていない事もあって、吉子の存在や京の存在を意識すればする程

彼の下半身は彼の意思を裏切る様に其の存在を誇張してみせる。



其れを酷く恨めしいと思った宗貞は困った様子で



「さて。コレが収まるまで時間稼ぎをどうするか‥」

などと途方に暮れてしまった。



まさか可愛い妹の居る目の前で服越しとはいえ勃起したままで居る訳にもいかず。

不幸中の幸いといえば、ネットでも雑誌でも如何わしいモノには手を出していなかった事位だろう。



そういう点では、何時でも吉子が興味本位で家捜ししてくれても大丈夫だったのだが。



「しかし一体、吉子は何用で私の部屋に??」

ふとそんな疑問が頭を過ぎり、宗貞はぼんやりと茶を淹れながら考え込んでしまった。




「宿題を見てもらうにはもう遅すぎる時間帯だし」
「そうなると、やはり昼間の件かバイトの件だろう」
「後者はともかく‥前者の場合だった時どう言い訳を擦れば良いのやら」


昼間、咄嗟とはいえ口から滑らせてしまった宗貞の『気に成る人』の存在。

女子で、しかも年頃である吉子ならば食い付いて来ても何ら可笑しくない話題性ではある。



そう思うと何だか頭が痛くなって来て。

宗貞は今日一日で悩み過ぎたせいか



「…‥知恵熱が出そうだ」

とさえ、漏らしてしまった。




「いっそ打ち明けてしまおうか。吉子に私の想いを」


こんな風に‥


愛している訳でも無い癖に『女』である事を意識した途端、京に邪な気持ちを抱いて自慰のおかずにしたり

一つ屋根の下に住んでいる愛しい妹を意識する余り、逐一ドギマギして悶々と日々を過ごすくらいなら



いっそ自分の想いを打ち明け、振られて楽になってしまいたい。


本意では決してないのだが、そんな自暴自棄な想いさえ生まれ始めて来ているのもまた事実。

其れでも、せっかく生き別れの父を探して遥々此の東京までやって来たのに




「…‥私の自分勝手な想い一つで、吉子の居場所を奪ってしまう訳にはいかないだろう」

兄である自分が許されない過ちを犯してしまえば、吉子はきっと此の家に居辛くなる。



そう思い直し、宗貞は再び深い溜息を吐くのだった。






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あきゅろす。
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