縁切りの神様 もしも奇跡が存在するのならばG 「アレから、妻と無事ヨリを戻せたんです」 「ッ///」 藤堂が、いきなり核心に触れる様な事を言い出したので。 「そ、そうですか……‥」 其の事で言い合いになった宗貞としては、心中穏やかなままでは居られず。 上手く話しを促す所か ドッドッドッ、と激しい鼓動を打つ心臓を宥める様に、手でそっと押さえるので精一杯になってしまったのだ。 其れでも藤堂はニコニコと笑顔を浮かべながら、報告とやらを勝手にペラペラと喋り始めた。 「とは言っても‥最初はてんで話しにならなくてですね」 「妻に会おうとしても着信は拒否されてるし、実家を訪ねても妻の両親に追い返されるし」 「挙句の果てに今度ちょっかい出して来たら警察呼ぶわよって脅されてしまいましてね」 「いやー、想像以上に大変でしたよ」 そう言って わはは、と明るい笑い声を上げた藤堂は己の苦労話しを笑い話に変えて語り始めた。 だが、其の明るい声とは裏腹に彼が払った努力や労力は決して安くなく 「其れでも‥自分にはやっぱり妻が必要だったんです」 「‥‥…藤堂さん」 「だから、どんなに拒絶されようともどんなに嫌われていようと諦めるなんて自分には出来なかった―――」 毎日毎日 根気良く妻の元へ足繁く通い詰め 何度も何度も飽きる事無く頭を下げては、愛する女に戻ってきて欲しいと。ヨリを戻して欲しいと嘆願したのだ。 そして、藤堂の誠実な態度に妻であった女も徐々に感化されていき。 一度は本気で愛し合った事も相俟って 「妻を愛して居たから‥貴方に言われた通り今度は自分で運命を切り開いてみせましたよ。住職さん」 「―――ッ」 とうとう、妻の閉ざされた心を氷解させる事に成功したのだ。 そうして 一度は自分で投げ打った幸せを再び手にする事の出来た藤堂は 「貴方のお陰です。本当に‥有難う御座いました!!」 もう一度、深々と頭を下げては礼を述べたのだ。 自分を奮い立たせてくれた、縁切り寺の住職に。 すると [*前へ][次へ#] |