縁切りの神様 例え其れが醜い独占欲だったとしてもD しかし、吉子からしてみれば何故反対されるのか理由が分からず 「…‥何故ですか??確かに私はまだ精神的にも肉体的にも未熟かもしれませんが‥社会勉強の一環として。何よりお父様やお兄様のお役に立ちたいのです!!」 と、大人しい容貌とは裏腹に 意志の強かった吉子は一歩も譲らず、兄である男に食って掛かったのだ。 そんな、吉子の意外な一面を見た宗貞は幻滅する所か――― 「…‥成る程ね」 と呟くと。 まだ16という若さにも関わらず、しっかりした考えを持っているのだなぁ。と酷く感心させられたのだ。 其れでも、愛しい女が訳も分からない人間の毒牙に掛かるかもしれないのにおいそれと社会に出す事なんて出来ない。と思った宗貞は 「ならこうしよう。君は此処で私の手伝いをしてくれれば良い」 何と、吉子を此の神社の巫女に据えようと試みたのだ。 そして、宗貞の提案に吉子は最初驚いて 「え‥……??」 と、目を白黒させる事しか出来なかったのだが。 「ふむ。其れは名案だのぅ」 「ち、父上ッ///」 「お父様?!」 何時から居たのか。 後方で立ち聞きしていた父親である男も宗貞の提案に便乗して来たのだ。 「良いでは無いか、吉子。何も無理に社会に出なくとも‥此の神社で働いてくれた方が儂も助かるし何より安心だからのぅ」 と。 其れは、宗貞同様に可愛い可愛い娘の身を案じての言葉だった。 そんな、父と兄の言葉に吉子は渋い顔をしてみせたが 「……分かりましたわ」 「「!!!!!」」 「お父様がそう仰るのでしたら‥素直に従います」 ふぅ、と息を吐いて肩の力を抜いてみせた彼女は最終的に折れてくれたのだ。 本当は外の世界も見てみたい、そんな気持ちもあったけれど 「其れに‥お兄様と一緒なら私も頑張れそう」 「ッ///」 やはり、自分の知らない世界へ飛び出す勇気がまだ足りなかった吉子は無難な選択をしてしまったのだ。 頼りになる、優しい兄の傍に居るという選択を。 そして其れが更に宗貞の秘めた恋心を煽る結果になるとも知らずに。 [*前へ] |