縁切りの神様 切れぬ縁、其れを人は運命の糸と呼ぶB 「うーむ…」 祖父である男は実に難しい顔を浮かべながら 「いや、儂自身にそういった経験は勿論無かったし…参拝客にもそう滅多にはおらんかったのぇ」 と、否定してみせたので。 もしも自身と同じ境遇の人間が居たならば。 其の報われぬ恋に身を焦がした者がどうなったのか末路を知りたい――― と、興味本位で前例を問うた宗貞は期待外れな祖父の言葉にガッカリし 「そう、ですか…」 あからさまな溜息を吐いて落胆してみせた。 矢先だった。 「ま、儂の知る限りではせいぜいお主の父親くらいなモンじゃよ」 「!!!!!」 フ。と喰えない笑みを浮かべた祖父がわざとらしい口調でそう言ったので。 そういえば。 なんて、今更其の事を思い出した宗貞が 「やはり父と吉子の母は縁が無かったのでしょうか??」 やたら真剣な表情で訊ねて来たので。 余り他人に関心を抱かない宗貞が、しかも男女の色恋沙汰に興味を示すなんて珍しいなぁ。と祖父も思って 「縁があるかどうかは…御仏にしか分からんよ」 と、やはり宗貞同様に真剣な表情を浮かべながらしみじみとした様子で答えてやったのだ。 そんな、祖父の僧侶らしい言葉に其れもそうだな。なんて宗貞も納得したのだが。 [*前へ][次へ#] |