縁切りの神様 決して叶う事の無い想いにF 「‥…私は馬鹿か―――」 「??」 惚れた女を早速泣かせるなんて。 そう、心の中で呟いた彼はポロポロと涙を零す吉子の身体を力任せに抱き寄せてやった。 そして 「誰が嫌うものか!!」 と、キッパリ否定してやったのだ。 吉子の不安を少しでも解消したい一心で。 そうすれば 「ほ、本当ですか…‥‥??」 ぐすぐすと涙を流しながらも、吉子はハッとして涙に濡れた顔を上げてみせたのだ。 そんな、健気でいじらしい吉子に愛しさを一層覚えてしまった宗貞は躊躇いがちにこう言ったのだ。 「‥勿論。何せ君は‥‥此の世でたった一人の、私の妹‥なのですから」 妹。 自分で口にして置きながら、其の単語にグサリと心が傷付いた気がした。 其れに気付かない振りをして、宗貞が真っ直ぐ妹である女を見詰めてやれば 「良かった‥私、嫌われてはいないのですね??」 「ッ///」 ホッとした様な、心から安堵した吉子の嬉しそうな笑顔が宗貞の瞳に映ったので。 途端に苦しいくらいの恋情を募らせてしまった彼は、いっそ嫌いになれてしまえたら良かったのに。と一瞬思ってしまった。 だが、嫌いになれる訳もなく どうにもならない、募る一方の此の恋情をせめて押し留めたい一心で彼は言ったのだ。 「其処で君に‥お願いがあるのですが」 「何でしょう??宗貞様」 「其の‥名前では無く。出来れば兄と呼んで頂けますか??私と君は‥兄妹、なのですから―――」 「!!!!!」 こうして、上辺だけでも兄妹として振る舞えば燃え上がるだけの熱い恋情にも歯止めが利くかもしれない。 そう思ったからだ。 けれど、其の目論見は寧ろ逆効果となってしまう。 何故なら 「…‥では、お兄様。とお呼びしても宜しいでしょうか??」 「なっ///」 お兄様、という響きに甘美な余韻を覚えてしまう程 其れは背徳的で、宗貞の暗く邪な感情を更に掻き立てるに相応しく。 危機感を覚えた彼が 「いや、やっぱり今まで通り名前で‥‥」 と、訂正させようとした瞬間。 [*前へ][次へ#] |