縁切りの神様 其れを運命と呼ぶのならC だが、皮肉な事に違う宗派の家系に生まれた彼女との再婚が周囲に認められる訳も無く。 「儂は自分の運命を呪ったよ」 「説得をどんなに試みようとも、誰も儂らの言葉には耳を貸さんかった」 「酷い時は嫌がらせを受ける事も少なくなかった」 「だから彼女は身を引いたんじゃろう」 其処で初めて宗貞の父と決して結ばれる事の無い運命にあるのだと悟った女は、とても寂しそうな顔をして人知れず姿を消してしまったのだ。 何処へともなく。 愛する男との間に出来た我が子を抱いて。 「其れから儂は彼女の行方を追った。方々捜してな。だがなかなか見付からん内に―――」 季節が何度移り変わろうとも彼女は見付からず。 初めて出会った時からもう二十回程の季節が巡った時。 「彼女は死んでしまったのじゃ」 「ッ///」 「まるで儂の不甲斐無さを恨む様に、な」 やっと見付けたと思ったら 彼女は既に死んでいたのだ。 そして――― 「代わりに見付かったのは彼女そっくりに成長した娘だった」 「父も居らず、風当たりの強い中。母と質素な生活を強いられていたあの子が余りにも不憫に思えてな」 「勝手な事を言っとるのは勿論分かっておるが‥」 「もう妻も此の世に居らん事だ」 「娘を引き取る事に誰も反対はせんだろう」 「宗貞、お前を除けばな」 宗派が違う上に片親となってしまった彼女は実の親からも勘当を言い渡されてしまい 故に当て所も無く各地を転々として生きざるを得なかった彼女への懺悔のつもりなのか 父である男が深々と頭を下げ 「頼む、宗貞!!」 「え‥‥…??」 「全ては儂が招いた業だ。何十年も隠しとってすまんかった。償いなら幾らでもしよう。だから‥後生だ。あの子を引き取る事だけは許して欲しい」 「―――‥‥…」 聞いた事も無いくらい切実な声色でそんな事を言い出すので。 「…父上」 まるで絵に描いた様な生真面目で道徳心の強い宗貞は、若気の至りとはいえ無責任すぎる父の行動に怒りを覚え拳をわなわなと震わせていたのだが――― 「分かり、ました」 「ッ、宗貞?!」 「どうせ行く当ても無い不憫な子なのでしょう??なら…引き取るしか手立ては無いじゃありませんか」 必死に込み上げる怒りを抑えながら 突如現れた妹の同居を許可してやったのだ。 娘には何の罪も無いと思って。 すると――― [*前へ][次へ#] |