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君を想う


 中村幹夜は、僕の幼馴染だった。
 幼馴染に過去形があるのかは不明だけど、今はあのころが嘘のように関わりがない。
 幹夜は優しくて人懐っこい性格から、誰からも慕われるような存在だった。
 しかも顔立ちがよく、片想いをしていた女子も多いみたいだった。
 けど幹夜は彼女を作らず、小さい頃からずっと僕と一緒だった。
 ……高1の夏までは。


――「ヒロ!」
 受験が終わり、高校生活にもなじんできた1学期末。すっかり熱くなってしまった日差しの中で幹夜が僕を呼ぶ。
「待ってよ〜」
 幹夜は美術部の僕とは違い、現役のサッカー部で歩くスピードが速い。
しかも体力があるので一緒に下校する時はいつも僕がおいていかれてしまうのだ。
「アイス溶けちゃうだろ、早く!」
 その日も案の定、数歩先を幹夜が歩いていた。
「ごめんごめん」
僕が息を切らせながらやんわり笑うと、幹也は黙って僕の手をひいて緩い坂道を登った。
あのときはどうして幹也が僕なんかと一緒に居てくれるのか、
何度か疑問に思ったけど、今では幻か嘘のように思える。
 こんな冴えない、凡人の僕なんかと、一
緒だったなんて。
 幹也が変わってしまったのはその日の夜だった。

――『ヒロ、俺……もうヒロと居られない……』
電話ごしのかすれた声が、小さく震えて僕を突き放した。
僕は焦って、今行くから待っててって叫んで家を飛び出した。
 ……きっと何かの冗談だって自分に言い聞かせて。
幹也の家の前まで行くと、玄関の前に一人でぽつんと立っている人影が見えた。
僕は気づいたらその寂しくて今にも消えてしまいそうな背中に
「幹也!!」
って呼んびかけていた。
幹也は振り替えって泣き腫らしたような赤い目で僕を見る。
それからまたかすれた声で僕の名前をそっと、大切そうに呼んだ。







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あきゅろす。
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