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お題挑戦・時節企画
居場所(とまとまと1万ヒット記念/破王物語)

卓球部に新入生が入った。


そんなことを遊部が報告してくれた。

(あいつらしいな)

と岩熊は苦笑する。もう、主将という座を降りたのに、肘を壊したという勝手な理由のせいで卓球部を去ったのに。

(あいつはまだ…)

自分のことを主将だと思っていてくれている。


中三である自分が去ったせいで中二に多くの負担がかかっている事は知っている。

特に、主将の遊部と部長の川末に。


だから、そんな好意も岩熊にとってはただ苦しいだけ。




―――(ちょっと、覗くくらいならええじゃろう)


岩熊はそっと体育室の外から中を覗いてみる。




その時、ドアからひょっこり遊部が顔を出した。

「あ。川末ちゃん岩熊さん来たで。」

続いて川末も顔を出す。

「主将。遅いから先始めましたよ。飲み物をどうぞ。」

そういって、紙コップを差し出す。




驚いた。


まだ、ふたりは自分のことを主将として扱ってくれていた。




そんな二人を。いつもと変わらない二人を見て岩熊は思った。



確かにここは、


自分が去った場所だから。



立ち入ることはできない。


だけど、


確かにここには岩熊の居場所があって、


見守っていてもいい場所なのだと。



遊部と川末の笑顔が、


岩熊にそう告げていた。

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