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お題挑戦・時節企画
さくら色の世界
風が吹くと―――


桜が舞散り、辺りが桜色に染まった。



「綺麗やなあーー。」

川末の横で素直に感心したような声を上げる遊部。

少し…。


(羨ましい)



遊部のように素直に自然を愛でるという事を川末はできない。

美しい自然を見ても、優しい心に触れても、


(いつも思うのは…)




その奥の人間の儚さや、心変わり。




この美しい桜だって、

咲き誇るのはほんの一瞬で。



それすらも、風雨に晒されれば無常に散りゆくだけ。




地面に落ちれば、



人に踏まれて醜態を晒すのみ。




きっと桜が美しいのは、永い一年というときの中でほんの春の一時。




青春も同じか。





青春なんて、永い一生に比べれば


(刹那)



その中で遊部と過ごす時間なんて、きっと記憶にも残らない。




その刹那でも。例え一瞬でも。

遊部の傍に少しでも長くいた。



そう感じていたいから。





川末はそっと、


      遊部の手を



              握った。



(願わくば)


この一時を思い出すとき。




今感じている、



甘酸っぱい青春の香りも

―――(思い出せますように)

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