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しかし僕個人が生徒会を嫌っているかと言えば、そういうわけでもない。
「木崎出ねぇの?」
「はい。風紀の仕事があるので」
「あーお前風紀だったなそういえば。どした、このフロランタン」
「桜庭先輩が作りすぎた分をくれました」
「あいつこんなのも作れんの?」
「はい、上手ですよね」
「お、美味い。へぇ、凄ぇな」
「西園寺会長は桜庭先輩と仲が良いので、ご存知だと思っていました」
「あいつは俺が昔世話になったチームの………」
「何で司いるんだよ」
西園寺会長と部屋で談笑していると、寮のフロントから市川が戻ってきた。
「よっ晶」
「ご苦労、市川」
寮で自炊をする場合、材料は部屋にあるタッチパネルから注文し、翌日フロントに届くそれを取りに行かなくてはならない。
市川はそれを取りに行ってから僕の部屋に来たようだ。
最初に招き入れて以来、僕の部屋に時折、市川がやって来て食事を作る。何でも僕が学食で食べるメニューの栄養バランスが悪いのが気掛かりらしい。市川の作る料理はそこそこ美味しいため、好きにさせている。
さて西園寺会長についてだが、迎賓室から寮に帰ると、市川の部屋の前にいたのだ。
どうやら市川に会いに来たらしいが、「今日は僕の部屋に戻って来ますよ」と言うと、迷わず部屋に上がってきた。
特に害もないので気に留めていなかったのだが、
「警戒しろよ……」
げんなりとする市川に、お前にだけは言われたくないと思った。
「何しに来たんだよ司」
「あ゛? 悪いかよ」
「帰れ」
「ふぅん……? お前懲りねぇなあ」
「はっ!? ちょっ近寄んな! 木崎もいるんだぞ! おいやめ、」
市川と西園寺会長が戯れているので、今日風紀委員会で貰った校内見取り図でも見ることにした。新入生歓迎会に向け、また今後に備え、覚えておくよう命じられたのだ。
「木崎がいなけりゃいいってか?」
「どんな脳みそしてんだ死ねっ!」
古賀学園は敷地も校舎も広く、なかなか一夜漬けで覚えられそうにもない。同じ名前の教室が第一、第二……と複数あるのも厄介だった。
「つーか木崎は助けろよ!」
「あぁ、悪い」
「発言と行動が伴ってねぇぇぇ!!!」
西園寺会長に「情無いな……」と言われてしまった。誠に遺憾である。というよりも、市川救助の原因となっている西園寺会長には言われたくない。
「市川、僕は空腹だ」
「えええええ………」
フロランタンで気を紛らわせてみるも、やはり物足りない。
膝に零れたアーモンドを払うと、そういえば制服のままだったことを思い出す。
「続きは明日な」
「しねーよ! あれ木崎!?」
「着替えてくる」
僕はクローゼットの併設されたベッドルームへと向かった。背後から断末魔の悲鳴が聞こえてくる。
市川が部屋に来ると、大変賑やかだ。
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