[携帯モード] [URL送信]
さかさまの愛に
 
 
 「木崎!」


 既に小さくなっていた背中を、慌てて追いかける。
 木崎に追いついたのは、中央校舎の南廊下。若干息の切れる俺にも容赦はなく、木崎は歩みを緩めようともしない。


 「何だ」
 「いや、何つーか、言い過ぎじゃないかなーなんて」


 あいつ泣きそうだったし。
 そういえば前に助けてくれたときは、俺を襲ったやつだけじゃなくて、司の親衛隊まで鎮めていた。そこまでコテンパンにしなくてもいいんじゃないかなー、なんて俺は思う。

 そう言うと、木崎はやっとこちらに視線を寄越し、何とも言えない表情をした。


 「あいつを庇うのか?」
 「え?」
 「鼻に掛けられる程度の家柄しか持ち合わせていないやつは、その鼻をへし折ってやればいい。お前は、それくらいの力を持っているだろう?」


 再び視線が前を向く。歩みは一層速くなり、木崎の横顔すら見えなくなってしまう。
 だから、表情はよく確認出来ないけど、もしかして。


 「………俺のこと、庇ってくれた?」


 ピタッと、木崎の足が止まった。


 「助けてくれたのか?」
 「………別に」
 「俺のこと庇った?」
 「庇ってない」


 木崎はまた、早足で歩き出す。
 それでも、立ち止まって「行くぞ」と振り返るのが嬉しくて。


 「ありがと、木崎」
 「……ッ」


 走って追いつき、木崎の首に思いっきり抱きついた。
 ちょっと絞まった気もするけど。愛情表現ってことで、許して。


 「俺、木崎のこと好きだよ」


 木崎は目を見開いて固まった。


 「………は?」


 行き交う生徒たちが、じろじろと俺らに注目する。あ、ここ廊下だった。


 「ご、ごめん木崎!」
 「………僕は男だ」
 「え? ってそういう意味で言ったわけじゃ!!」
 「当たり前だろう。気色悪い」


 そんな嫌そうな顔しなくても……。



[←][→]

14/16ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!