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 「"いいんちょう"? あれ、ってか北斗と月兎、同じ制服じゃん。晴一も司もだし」


 いーなー俺もお揃いがいい、と呑気に宣う赤峰さん。委員長は「また高校生しますか」と笑顔で返す。あの"Rouge"総長にそんな軽口を。その態度に、二人の仲が近しいことが窺える。


 「驚いたな。北斗と月兎が同じ学校だとは」
 「今年の春に"月兎"が編入して来たんだよ」
 「………そういうことは早く言え」
 「聞かれなかったから」


 おぉ、あの黒崎さんにまで。
 ニコリ、と笑みを浮かべる委員長に、黒崎さんは頬をひくつかせた。


 「………"白薙"?」


 そんな二人のやり取りに、晴一さんが呟いた。
 勘繰るような物言い。気づいた委員長が「鋭いね」と笑う。


 「その勘があれば、もっと早く僕に接触して来ると思ってましたよ。学園内で」
 「……一般生徒の名前は覚えてないんだよ。問題でも起こさない限り、な」
 「"Rouge"の犬も鼻が利かないようですね。色香にうつつを抜かしているから」
 「てめぇ抜かしてんじゃねえよ」


 あくまで挑発的な委員長の態度に、言われた晴一さんより早く司が反応した。身体を前に遣る、その動きと共に、委員長と司の間を影が遮る。


 「うちの総長に手ェ出すなよ」
 「………お前」
 「桜庭も西園寺も。気づかないんだもん、お陰で楽だったけど」


 その人は、―――学園の制服を着ていた。
 茶色く染まった髪を逆立てている。うっすらと浮かべた笑みは、表情と裏腹の獰猛さを孕んでいる。俺はそれを知っている、それに触れたことがある。

 それは新しい記憶。


 「ども。"blanc"、入谷でっす」


 俺にナイフを突きつけた。
 イリヤ、と名乗るその先輩は、「昨日ぶり」とひらひら手を振った。忘れるはずもない。

 委員長は微動だにしない。まるではなから、入谷先輩が自分を庇うと分かっていたかのように。余裕の笑みに、改めて委員長が"blanc"の総長なのだと再認識させられた。
 ふぅ、と息を吐く。


 「入谷。また何かしたの?」
 「ボスには迷惑掛かんないから大丈夫」
 「……お前は、"blanc"の一員としての自覚を持て」
 「持ってるよ。今だって庇ったじゃん、只突っ立ってたてめぇとは違ぇんだよ」


 入谷先輩は、逆隣の男に笑みを返す。彼も"blanc"のメンバーなのだろう。スキンヘッドの男は、無表情の中に微かな変化を見せる。鋭い視線を向けられても、先輩は気に留めない様子だ。


 「何で………委員長が、」
 「愚問だよ市川。俺こそが、この場に相応しい」


 どういう意味だ?

 倉庫はシンと静まり返る。黒崎さんは険しい表情で、赤峰さんはどこかそっけない顔をあさっての方に向けている。只、意識だけは委員長に向いているのが分かる。


 「俺は白薙 瑠衣の、血を分けた弟だよ」


 "blanc"は、ルイさんの亡くなった後に出来たチームだ。

 ルイさんの遺志を告ぎ夜の街を護る、それが"Noir"と"Rouge"なら。
 "blanc"はあの日のまま、ルイさんのために在る。彼女の存在が"blanc"を動かす。

 空高く上がる白煙。
 死者を弔う、追悼の"blanc"。


 そしてそれは、


 「"blanc"は手加減しない。一刻も早く佐原を見つけ出す」


 ―――反撃の狼煙。



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あきゅろす。
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