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「木崎がメイド喫茶でやる気ねぇ……。ふーんへーえ」
「司気持ち悪いよ」
ニヤニヤと笑う司に、笑顔でぴしゃりと言い切る紫先輩。その様子を見て、駒井先輩が噎せたように咳込む。
「晴一に教えてやろ。あいつの顔見てみてーな」
「何で晴一さん?」
「あいつムッツリだから」
司の失礼発言に、駒井先輩が今度こそ笑い出した。
「確かに! 絶対百面相する!!」
「見たいけど見せたくないー、みたいな」
「ちょっと今言ってこよーぜ」
何なんだこの二人は。
煩わしそうな顔の紫先輩も、クラスメイト二人を今更止める気もないらしく、口に出して止めようとはしない。
お茶もそこそこに二人が生徒会室を出て行くと、急に静かになったような気がした。
「駒井は………何というか、悪ふざけが過ぎる」
「ははは……」
そうですね。
あれは才能だな、と褒めているのか皮肉なのか分からない口調で、紫先輩はオランジェットをつまむ。唇の先に咥えパキンと折ると、透き通った黄金(キン)色の粉がパラパラと落ちた。
「才能と言えば僕の愚弟だよ。発想は突飛だし、理論立っていないことが多いから収束が付かない。二年のSクラスはどうなることやら」
上ノ宮がブレーキになればいいけど、とひとりごちるように言う紫先輩。
俺は口に含んでいた紅茶をごくりと飲んだ。
「あの、」
「何?」
「第三学年のSクラスは何をするんですか?」
実行委員会の会議には、生徒会役員として俺も参加していたけれど、まとめに必死で各クラスの催しまでは詳細に覚えていない。
改めて聞くと、紫先輩は笑みを浮かべたまま遠くを見るような目をした。
「ホスト」
「………え」
「立案は駒井。推したのが司。反対する生徒なんていなかったよ」
それは………ご苦労様です。
ていうか高校の出し物として、「ホストクラブ」というのはありなんだろうか。よく先生も認可出したな。
俺の表情を見て「ノンアルコールしか出さないらしいから、一応大丈夫みたい」とげっそり言う紫先輩。そういう問題ではないのだけれど、俺は黙っていることにした。
「決まったよー!」
突然勢いよくドアが開き、ご機嫌そうな近江先輩が入ってきた。いつも血色のいい肌が、一段と紅く染まっているように見える。
「何がですか?」
「学園祭!チョコレート工場だよっ!」
「えっ」
「えっ」
「………止めれなかった」
後ろからトボトボ入ってくる大倉先輩に、俺たちは顔を見合わせた。
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