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家柄とか、そういうのに左右されない学園が好いと思ってた。
実際、前ほどにはそう言った差別も少なくなってきたようだし、俺も「庶民だから」と蔑まれることもない。でもやっぱり、この学園の習慣は根付いているらしい。
家柄なんて関係ないし。
俺は俺だし、有坂は有坂だし。
それじゃあ駄目なのかな。駄目なんだろうな。たとえ有坂が有坂でも、周りが「有名な生徒に付き添う有坂 巡」と評価したなら、それは無意味なことなんだろう。
「まぁ、今日は北斗いないしちょっと楽かな」
はっと気づけば、有坂はサラダを完食して、メインのチキンにありつくところだった。俺も慌てて焼肉とサニーレタスを摘む。
「……って、何で委員長?」
「………市川って本当鈍いよね。まあ木崎もだけど」
「有坂ってひどいよね」
「事実だし」
そろそろ俺、傷つくぞ。
「北斗も有名人だから」
「えぇっ!?」
「市川、本当に気づいてなかったの? 視線とか」
「や、木崎と一緒にいたら必ず注目されるから。慣れで」
「………あっそ」
それにしても、俺の周りって有名人ばっかりじゃないか。どの方角も鬼門、唯一安全かと思われる有坂方面は毒の海だし。
「北斗の家はさぁ」
有坂はあーんと開いた口にチキンを迎え入れながら話す。
「医者なんだよね、二人とも。で、忙しいから子供に構ってる暇もないみたいで。だから北斗は全寮制の学園に入れられたらしいよ」
「…………え」
「構ってる暇ない、っていうか、何か冷たいんだよね、北斗の両親って。お金払って大きい子供の世話全部見てくれるって言うんだから、ポンとてっとり早くこの学園に入れたんじゃない?」
北斗の家、ここから近いし、と有坂。
だから委員長、名字で呼ばれることを嫌がってたのか。
「………そんな」
「まぁ僕が知ってるくらいだから、北斗の家の事情は裏じゃ有名だよ。北斗もそれ知ってるだろうし、市川が心配したところで鬱陶しいだけじゃない? 放っておきなよ」
「でも……」
「何でも干渉するばっかりが優しさじゃないでしょ。ほら、もう昼休み終わるよ」
未だ半分も減っていない皿を指され、俺は慌ててお椀を引っ掴んだ。
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