--02 家柄とか、そういうのに左右されない学園が好いと思ってた。 実際、前ほどにはそう言った差別も少なくなってきたようだし、俺も「庶民だから」と蔑まれることもない。でもやっぱり、この学園の習慣は根付いているらしい。 家柄なんて関係ないし。 俺は俺だし、有坂は有坂だし。 それじゃあ駄目なのかな。駄目なんだろうな。たとえ有坂が有坂でも、周りが「有名な生徒に付き添う有坂 巡」と評価したなら、それは無意味なことなんだろう。 「まぁ、今日は北斗いないしちょっと楽かな」 はっと気づけば、有坂はサラダを完食して、メインのチキンにありつくところだった。俺も慌てて焼肉とサニーレタスを摘む。 「……って、何で委員長?」 「………市川って本当鈍いよね。まあ木崎もだけど」 「有坂ってひどいよね」 「事実だし」 そろそろ俺、傷つくぞ。 「北斗も有名人だから」 「えぇっ!?」 「市川、本当に気づいてなかったの? 視線とか」 「や、木崎と一緒にいたら必ず注目されるから。慣れで」 「………あっそ」 それにしても、俺の周りって有名人ばっかりじゃないか。どの方角も鬼門、唯一安全かと思われる有坂方面は毒の海だし。 「北斗の家はさぁ」 有坂はあーんと開いた口にチキンを迎え入れながら話す。 「医者なんだよね、二人とも。で、忙しいから子供に構ってる暇もないみたいで。だから北斗は全寮制の学園に入れられたらしいよ」 「…………え」 「構ってる暇ない、っていうか、何か冷たいんだよね、北斗の両親って。お金払って大きい子供の世話全部見てくれるって言うんだから、ポンとてっとり早くこの学園に入れたんじゃない?」 北斗の家、ここから近いし、と有坂。 だから委員長、名字で呼ばれることを嫌がってたのか。 「………そんな」 「まぁ僕が知ってるくらいだから、北斗の家の事情は裏じゃ有名だよ。北斗もそれ知ってるだろうし、市川が心配したところで鬱陶しいだけじゃない? 放っておきなよ」 「でも……」 「何でも干渉するばっかりが優しさじゃないでしょ。ほら、もう昼休み終わるよ」 未だ半分も減っていない皿を指され、俺は慌ててお椀を引っ掴んだ。 [←][→] [戻る] |