「財前、今日は亜由ちゃんと帰らへんのか?」 「うるさいっスわ謙也先輩。大体誰の許可得て亜由のこと名前呼びしてはるんですか?」 最近謙也が部活が終わって帰ろうとする時、すぐにこの会話を財前に持ち出す。財前はおもいっきり嫌そうな顔してるんやけど。 …とりあえず、亜由って誰や。 「いつ会わせてくれるんや?」 「絶対会わせないっちゅーねん」 1つ言えることは財前も謙也もその子に気があるっちゅーことやな。 どんな子なんやろな、と思いながら謙也や財前と一緒に帰ろうとする、が。 「…なんでついて来はるんですか」 「あ、この反応は亜由ちゃんやな!?一緒に帰るんやな!?」 どうやら会えるらしい。よっしゃ、俺も一目見といたろか。 嫌がる財前についていく(謙也にもなんでついてくるんやって言われた)と、途中で財前がキョロキョロしだした。 「ひかちゃん!」 聞き慣れない声と呼び方に(聞き慣れとったらそれはそれで驚きやな)その声がする方に顔を向けると、小柄な女の子が駆け寄ってきおった。 「あ、亜由ちゃん久しぶりやな」 「こんにちは謙也くん。お久しぶりです」 さっきのテンションはどこへやら、謙也は吃りながら言葉を紡ぐ。さすがヘタレスターや。 「亜由、こんなヘタレほっといて帰るで」 「先輩にそんなこと言っちゃだめって言ったでしょひかちゃん!」 ぷりぷり怒りながら言う彼女は見た目普通。だけどなんちゅーか、雰囲気がふわふわしとってあったかい。それに、笑顔がかわええ。財前や謙也が気にするのもわかるわ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |