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隠神刑部





「一番それっぽいのは隠神刑部か…」

隠神刑部、もしくは刑部狸。それは伊予国、つまり今の愛媛県の松山に伝わる化け狸のことである。松山騒動八百八狸物語という物語に登場しているのがそれだ。その中では、隠神刑部は久万山の古い岩屋に住み、松山城を守護し続けていたという化け狸。八百八の子がいたため、八百八狸とも呼ばれたらしい。そして、四国最高の神通力を持っていた、と。
まあ、これは民話の話であって本当かどうかはわからない。だが、民話というものは作り話ではなく、実際にあったものの方が多い。火のないところに煙は立たない。その言葉通りである。

「どこにいんだかなァ、あの狸」

あの後すぐ家に帰った私はすぐに四国八十八鬼について調べ始めた。四国に狸が多いのは有名な話だ。さっき言った松山騒動八百八狸物語と並ぶ証城寺の狸囃子は千葉、分福茶釜は群馬の話であるが。
相手を倒したいならまず知ることから。それができないと力があっても足元を掬われることがあるし、何より知っていた方が有利だ。それに、アイツは私のことを知っていた。何故だ。だが、そのことはいくら考えようが答えは出てこないだろう。…私が考えることが得意じゃないだけなんだけどさ。アイツが狸前提で調べたのは、ただの勘。
調べて出てきたのは八百八だが、アイツは八十八だと言っていた。それぐらいの誤差は、予想範囲内だ。それに、一桁増えるどころか一桁減ったから、その方が楽。ラッキーだ。
あとすることは、あいつが今どこにいるか探り、戦力等を把握することだ。

ぐぅ〜

………なんて緊張感がないんだ、自分の腹。急に鳴った腹を触りながら時計を見ればもう22時。…こんなに遅いとは。一回集中しちゃうと止まらなくなるんだよな、と思いながら台所に行き冷蔵庫を漁る。あ、冷凍ドリアはっけーん。今日はこれでいいや。その見つけた者をレンジに入れて入れ物に書いてあった通りの時間をセットする。チンできるまでの間に冷蔵庫で発見したチーカマを食べる。…私はオッサンか。

「いただきまーす」

チンできたドリアを目の前に手を合わせて言う。…なんか、さみしいけど我慢我慢。リクオ達も何かしら対抗策を練っているだろうから、私もなんかしないと。






 


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あきゅろす。
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