「宍戸、向日!こいつを起こす方法はねぇのか!」 ぐがーっとベンチで寝続けるジローに青筋を立てて切れている跡部に声をかけられてため息をつく。俺と岳人が呼ばれたのはジローの幼なじみだから、だ。 「ジロー起こす方法なんてねぇよ。熟睡なんかしちまったら特にな」 跳ねながらこっちにくる岳人を遠目に見て(何故そんな無駄に跳ねるのかは今だにわからない)再びため息をつく。跡部の眉間にシワが寄っていく。そのうちジローは殴られるだろう。酷いときは殴られても起きねぇけど。 「方法はねーけど起こせる奴はいるよな!」 ニカッと笑いながら言う岳人に、それを聞いて眉間からシワが消す跡部。珍しく驚いているんだろう。 「誰だそれは」 「ジローの双子の妹の椛!」 …岳人はどうやらそのジローの双子の妹である椛の言い付けを忘れているらしい。 面倒臭いことになりそうだから『あの』派手な男に私の存在を教えるな、と言っていたことを。そして、どうせとばっちりを喰らうことになるのは俺だということを。 本日何度目になるかわからないため息をついた。 [次へ] [戻る] |