必死でフォローしてくれた部長の妹のおかげて命をつなぎ止めた俺。あ、苗字幸村で合ってたな。部長を止められる人間はこの世に存在しないと思っていたがいたらしい。この短時間でわかった。部長は極度のシスコンだ。 それにしても、なんであいつは俺のことかばってくれたんだろうか。俺は酷いことしか言ってねぇのに。ちらりと部長と話しているそいつを見ればすごく暖かくて可愛い笑みを浮かべていて。ただ単にこいつが優しいだけなんだろうな、とそう思った。 ……今可愛い、とか思ったか?いやないないない。あいつの顔は普通寄りじゃねぇの?…そんなことはなかった。結構可愛い部類だ。そりゃそうだよな、あの部長の妹だ、可愛くて当たり前だ。でも性格は反対だ。あいつはすっげー優しそうで、部長はそんなことない。まあ部長の外見だけは優しそうだが。 そんなかんじであいつのことばっかり考えてる自分に驚いた。なんだ、女のこと考えつづけるなんて珍しい。部長の妹、だからか。 「切原君」 「、な、何?」 急に高い声で名前を呼ばれて我に帰る。部長と柳先輩はもういなかった。ここにはもう俺達しかいない。 「お兄ちゃんがごめんね?なんかわけのわからないこと言い始めちゃって…」 「いや、別にお前が悪いわけじゃねぇし。部長はまあいつものことだしな」 シュンとしながら謝るそいつに内心冷や汗をかく。部長がわけわからないことを言っただなんていえるのは、後にも先にもこいつだけだろう。 「そっか、良かった。じゃあ切原君、またクラスでね」 困ったような、それでいて嬉しそうな顔で笑うそいつに胸が高鳴った、気がした。うわ、可愛い。 思わず幸村、と呼び捨てにするにはなんとも恐ろしい名前を発してそいつを止めた。 「教室まで一緒に行かねぇ?」 「!うんっ」 [前へ][次へ] [戻る] |