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失われたものが

中2冬



「は……?」

体育館でいつも通り練習していると(女バスは大会中らしくていない)、監督にレギュラーとさつきだけが集められて。次の試合のことかなんかか、と思ってあくびをかみ殺しながら聞いていると信じられない言葉が耳に入ってきた。

舞が、試合中に大怪我を負って選手生命を失われた、と。

嘘だ嘘だ嘘だ。そんなわけないだろ。舞が、あんなにバスケが好きなやつが選手生命失われるとかありえねーだろ。あいつからバスケ好きを取ったら何が残るんだ。なんの冗談だ、と監督に言っても本当のことだ、と言われて頭が真っ白になる。さつきが病院の位置を聞いて今日の練習はお開き。全員で見舞いに行くことになった。
どうせ、どうせそんなの嘘なんだろ?治るんだろ?いつものようにバカみたいに笑いながらバスケやるんだろ?

「バスケ、できなくなっちゃった」

舞が最初に発した言葉にカッとなる。なんでそんな笑えない嘘を言うんだ。監督といいお前といい。しかしなんで、と言葉にすることができない。舞は、いつもみたいなバカみたいな笑みを浮かべていなかったから。泣きそうなのを堪えた痛々しい笑顔を作っていたから。こんな顔見たくねぇ。俺が見たいのは、バスケでできる楽しそうな顔だ。なのになんで今はバスケでこんな顔を作ってる?

「なんでっスか。俺は青峰っちのバスケに憧れてバスケを始めて、舞ちゃんのバスケに憧れてバスケを続けたのに。なのになんでできないとか、」

黄瀬が顔を歪めながら舞に言うが、すぐに部屋から出て行った。
俺も同じようなもんだ。俺は、舞がやってるバスケが好きで、バスケをやってる舞が好きだったんだ。





 

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あきゅろす。
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