第33診沿い。 あー、なんか頭ガンガンする。珍しいな健康児の私がこんなになるなんて。 「千遥、大丈夫?保健室……はだめか」 「……保健室行く」 「ええ!?」 そうだ、保健室行けば逸人くんに会えるじゃないか。ナイスだよあんた!と目の前にいる友人にグッと親指を立てる、元気もなくフラフラと立ち上がる。友人はオロオロしてるけど。 「つ、着いて行ったほうが…」 「大丈夫大丈夫、一人でいけるよ」 怖い、でも心配。明らかにそう顔に書いてある友人に苦笑しながら教室を出た。 「失礼します…」 さっき以上にガンガンするする頭を押さえて保健室に入る。うぅ、逸人くんとお話したいとかそんなこと言ってられない…。 「あ、蛇頭さん」 そこにいたのはまたアシタバくん。本当に保健室に入り浸ってたんだー。その近くには藤くんと美作くん、あと違うクラスの運動神経抜群って有名な鏑木さんがいた。あとはもちろん逸人くんと経一くん。…は、経一くん?ナイナイ、とうとう幻覚見るまでになってしまったのか…。 「どうしたんだい?」 「……え……は?」 「頭痛くて…ベッド借りるね」 幻覚経一くんがなんか私を見て固まってる気がするが無視無視。経一くんがいるとかありえないもん。 「珍しいな、女子が来るなんて。しかも可愛いと有名な蛇頭」 「あれ、蛇頭じゃん」 「美作くんも藤くんもあの子のこと知ってるの!?誰!?先生と親しそうじゃない!」 鏑木さんが藤くんの胸倉を掴んでグラグラ揺すってる気がするけどそれも気のせいだろう。体温測ろう、とか色々言ってくる逸人くんにとにかく寝かせて、とだけ言ってベッドに向かう、が。 「なんで千遥がここにいるんだよ!!」 経一くんが復活した。経一くんの声は大きいから頭に響く響く。お姉ちゃんに言い付けるぞこの野郎、とは考える余裕が無く、っていうかあの…歯止めが効きません。 「うっが!!」 「っえぇえ!!?」 手を伸ばして経一くんの頭を掴み、そのまま机に叩き突けた。経一くんからは痛みに悶えた声、他のみんなからは驚きの声。しかしそんなことは気にしていられない。 「経一くんうるさい…頭に響くでしょうが…」 ああもう、と経一くんから手を離してぽつりと言えば経一はさっきの表情から一転、心配げなものへと変わる。 「!具合悪いのか?」 「…うん」 「大変じゃねぇか!家帰るか?それとも病院?送ってくぜ」 「寝れば治るから」 「ダメだダメだ!早く帰、」 「うっさい」 いい加減鬱陶しくなってギロリと睨めば経一くんはう、と眉を垂れ下げた。よし、いつも通り扱いやすいぞ。それを見てはぁ、とため息をついてベッドへと入り込んだ。 「う…千遥反抗期か…?」 捨てられた子犬のような目で蛇頭さんが入って行ったベッドをじーっと見ながら経一、さん?が言った。あ、先生が可哀相なものでも見るような目をしてる…めずらしいな。 「で、あの子は一体何者なの!?」 そこで僕の肩をグラグラ揺すってきたのはもちろん鏑木さん。さっき藤くんもやられてきたけど大した返事は帰ってこなかったんだろう。それはそうだよね、蛇頭さんは同じクラスなだけで、僕が彼女の家のこと知ったのも奇跡に近いし…。 「先生の知り合いの妹なんだって…。それで、あの人と一緒に住んでるんじゃないかな…」 揺すられたせいで若干頭がクラクラするけどなんとか言葉を繋ぐ。それでもまだ鏑木さんは疑うような目で見てきてもう一度口を開いた。 「先生はお兄さんみたいなものだって言ってたよ」 そう言うと鏑木さんはほっとしたような顔付きになって僕を離す。…もちろん僕も一緒にほっとしたんだけど。 「…大体なんで千遥は逸人のいるとこに通ってんだよ…」 「お前に言うとうるさいからだよ」 「俺嫌われてる!?」 まだ経一さんは蛇頭さんのことで落ち込んでるらしくて、先生が適当にそれをあしらっている。 「…なんか意外だな、蛇頭が先生と知り合いだったなんて」 「俺はお前が蛇頭のこと知ってたことの方が意外だぜ」 「さすがに出席番号後ろのやつぐらい覚えてるっての」 あ、そっか。出席番号蛇頭さんはは藤くんの後ろなんだ。へぇ、と聞いていると藤くんが思い出した、と経一さんを見る。 「もしかして前連絡網回した時に出たのってアンタ?」 「あ?お前…あん時の生意気なガキか?」 藤君と経一さんが無言の睨み合いを始めてしまったけど、僕たちにはそれを見守るしか術はなかった。 [RE] [戻る] |