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もんじゃじゃないよ





「お姉ちゃー…なんだ経一くんか」

家に帰ってから1時間くらい経ち、お姉ちゃんのいる所、つまり職場へと向かえば(だって人の気配がしたもん、なんとなく)そこにはお姉ちゃんの姿は無く、いるのは経一くんのみ。経一くんなら頼りにならないや、と踵を返せば肩をガッと捕まれて。

「いやいやいや待てよ!なんだってなんだなんだって!」
「なんだばっかりでわけわかんないよ」

悪いのはガラと態度と目つきと言葉遣いだけで…って結構あるな…うんまあとにかく、実はそんなに怖くない、むしろ淋しがり屋な彼に肩を捕まれて言われてもなんも怖くないわけで、サラッと返す私。

「経一くんに聞いたって絶対わからないし」
「あ?何がだよ」
「数学の宿題」

またさっきと同じように返したが経一くんはびしりと固まった。うん、経一くんが勉強できないのはわかってるよ。だから聞かないにしようと思ってたのに。

「いくらオレだって中学生の数学ぐらいわかんだよ!なんだって聞きな!」
「強がらなくたっていいよ?」
「くっ…」

冷や汗っぽいもの流れてるし、と指摘すれば経一くんは体育座りになってのの字を書きはじめる。子供っぽいなぁ。本当にお姉ちゃんと同い年なのだろうか。でっかいのは図体だけじゃん。そう思いながら経一くんの背中をぽんぽんっと叩いてあやす。あれ、私お母さん?うんうんと唸りかけると経一くんがガッと立って復活した。

「アレだ、三人寄ればもんじゃの知恵って言うだろ!一緒に考えてやる!」
「…早くも先行きが不安なんだけど」

もんじゃじゃないよ経一くん、と言うとあ、お好み焼きか。と笑って返されて更に不安になる。もう無理だ、助けてお姉ちゃん。

「…お姉ちゃんは?」
「鈍ちゃんは買い出しだ。帰んの遅くなるってよ」

私の持っていた数学の教科書を取ってペラペラめくり顔をしかめる経一くんにため息を零した。
結局お姉ちゃんが帰ってくるまで私が経一くんに数学を教えてあげたのは言うまでもない。




 

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あきゅろす。
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