◇LIQUID AND SOLID 自転車と黒 忘れずに自転車を取りにいって、立ちこぎで帰る。 きっとかんたが待ってるはずだ。 レストランのある辺りは平地だが、家に近付くほどアップダウンがはげしくなる。 一番きつい上り坂で30度強もあるので、隣接する家々の土台も斜めだ。 最後の力を振り切って上り坂を登りきれば、あとは下り坂と平坦な道のみ。 アキはブレーキもかけずに急な下り坂を疾走した。 むしろさらにペダルをこぐ勢いで、ガタガタと自転車が悲鳴を上げるくらいだ。 平地にさしかかってはじめの角を曲がると、 車があった。 危ない!!ぶつかる……っ! かなりのスピードが出ていたためにブレーキが滑ってしまい、なかなか止まらない。 あ、あ…!あと数メートル…! 衝撃を覚悟して身を固めると、 狭い狭い道路にギリギリだった車が、耳障りな音をたてながらバックした。 黒く、ライトのついていないその車は、やがて後退しながら角を曲がり、闇に消えていった。 見た感じ高級車に見えたそれを、よくこんな狭いところにもってこれたものだ。 相当ドライビングテクニックがなければ、傷付くのを恐れて入ってこないだろう。 並みのドライバーなら絶対に傷がついていた。それほど、この道はあの車にはギリギリで、そして危険な運転だった。 [*前のゴミ][次のゴミ#] [戻る] |