◇LIQUID AND SOLID
初恋と想う
ゆったりと奏でる優しいメロディー…ショパン、夜想曲<ノクターン>2番。
彼は初恋の人にアプローチさえできなかったほど内気で繊細だった。
お相手は天使の歌声を持ったと言われるソプラノ歌手、コンスタンツィア。
しかし彼女は、
ショパンが不幸な人生に翻弄され、ついに亡くなってしまった後に想いを知ると、
「頼りのない人だった」
そう言ったそうだ。
想いとは、口に出さないとこうも伝わらないものなのか。
夜を想う曲。
彼はどんな想いでこの曲を書いたのだろう…。
―――――---‐‐
バイトが終わってスタッフルームに戻るが、誰もいなかった。
藤本先輩にスケジュールを知らせないと…もう帰っちゃったのかな…?
仕方がないので、電話横に置いているメモ帳から紙を一枚いただいて書き置きする。
「…しばらく土日は空いています…っと。よし」
カバンを肩に掛けて、裏口から外にでる。
この扉は営業時間はいつも施錠されていない。
田舎だから鍵を閉める習慣がない……訳ではなく、閉めると従業員が入れなくなるからだ。
僕はゆっくりと扉を閉めると、歩いて家に帰る。
結構な距離があるからいつもは自転車で通っているが、
マンションの駐車場に置いていたせいで悪戯されてしまったのだ。
きっと子供が画鋲でも使って穴をあけたんだろう。パンクしていた。
バイトに行く前に修理に出したので、もうなおっているはずだ。
危ない、危ない、忘れるところだった。
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