◇LIQUID AND SOLID
毛と寝た子
結局かんたの散歩は公園までの行き帰りだけになった。
その間、人とは全く会わなかった。
―――――---‐‐・・
「かんた…新しい友達、見つからなかったね」
本当なら大勢の子ども達とふれあわせてあげたかったんだけど…。
当分は無理だろう。
「早く不審者が捕まるといいね」
耳の後ろをカリカリとかいてやると、気持ちよさそうに目を細めて、
薄い舌でお礼のように舐めてきた。
そのくすぐったさに思わず顔が綻んでしまう。
お返しに体をなぞるように撫でていると、生え変わった毛がふわふわとどこかに飛んでいった。
「あれ…すごいたまってる?」
よく見ると、生え変わった毛が抜けずにだまになっている。
「けづくろい…しよっか」
丁度かんたは眠たそうに横になっている。
遊びたい盛りの子犬がはしゃいでいるときにけづくろいするのは大変だろう。
今のうちに…あれ?コーマーどこにしまったっけ…?
寝た子を起こさないように、そーっと立ち上がりコーマー…櫛を探すが、見つからない。
ポケットの中に入った鍵と携帯がカチャカチャと音を立てるので、これもそーっと取り出してテーブルの上に置いた。
あっ…そういえばあのペットショップの袋ごとクローゼットに詰めたんだ!
思い出して静かに部屋を移動する。
抜き足、差し足、忍び足。
ドアノブを静かに回す…。
ヴー!ヴー!ヴー!
………何で今!!
マナーモードにした携帯がうるさく自己主張している。
しかもメールではなく電話。
固い机に面しているせいで、よけいに響く振動音に、案の定かんたは起きてしまった。
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