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◇LIQUID AND SOLID
後悔とかんた


「隆兄、ありがとう!」


バイクの爆音で声がかき消されるので、自然と声を張り上げながらの会話になる。


「ああ!別に構やしねぇよ!また今度水上バイクにも乗せてやっからなー」


お茶でもいかがですかー!と叫んだけれど、


言い切る前に隆太はバイクを走らせていった。



それにしてもバイクって結構スピードがでるものなんだな…。

ドップラー効果で最後は何て言ってたのか判らなかったし…。


隆太の兄心はバイクの加速度に負けて空へと消えていったのだった。


―――――‐‐・・


何だか朝帰りをして叱られる前のような気分になる。


―――したことないからわからないけど…。


そぉーっと音を立てないように玄関を開けると…。



かんたは寝ていた。


冷たいタイル張りの玄関で。



「………っ!…かんた…っ」


これじゃ雨の日にかんたを捨てたやつと変わらないじゃないか…っ!


「かんた…かんた…!…ごめんね、ごめんね」


かんたを拾い上げてギュッと抱きしめる。

いつからここにいたのだろう。

かんたが寝ていた4マスのタイルは暖かくなっていた。


頭を撫でていると、かんたが瞼をあげてこちらをみていて、目があった。

例の白がさした恨めしそうな目では無くて、

ただ ただ、現実を受け入れた、無垢な瞳だった。


悲しむわけでもなく、責めるわけでもないその眼差しに、アキは悲しくなった。


自分は何をしていたんだろう。
幼いかんたにとって、今は愛情をたっぷりと受けなければいけない時期だ。

かんたは悲しくないわけじゃない。

悲しみを知らないんだ。

まるで少し前の自分を見てるようで切なくなる。


かんたへは、僕にとってのタカみたいな存在になるって決めたのに…。


アキはしばらく、後悔と共にかんたを抱きしめたまま玄関に立ち尽くしたのだった。


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