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◇LIQUID AND SOLID
悪戯心と悪巧み

まどろんでいるとき

それは水の中にいるみたいだ。

ふわり、ふわり、意識がもどる感覚は体が水面へ浮上するそれに似ている。

自分が起きかかっていると判るぐらいにまでなったとき、

誰かが何か呟いているのが聞こえた。


水を隔てたその声は、もう少し大きければこちらへ届くのに、


囁くようなものでしかない。


しかし、その声を聞く前にアキは突然水から引き上げられた。


ブォン!…ドッドッドッドッ…


ハッと起き上がって窓の下を見ると、

「………バイク?」


黒に赤いトライバルの大型バイクが止まっていた。


バイクに詳しくないアキには何のバイクなんて全くわからなかったが、

かなり重そうなバイクだと思った。


きっとアキには倒れてしまっても立てられないだろう。



フルフェイスメットをかぶったライダーがバイクから降りると、玄関まで歩いてゆく。


しかし、すぐにバイクのもとに戻ってきた。


「……あの人何してるんだろう…」


さっきからバイクと玄関を行ったり来たりしていて、何か困っているようだ。


しきりにアキのいる窓を見上げているが、見えていないのかこっちに気づく様子はない。



タカの知り合いかな?

……でもタカはまだ寝てるし…起こした方がいいのかな…。


チラリとタカを見て、そう言えばタカの寝顔をみるのは初めてだったと気づく。



……寝顔もかっこいいなんて、ちょっとずるいなあ。


じっと見つめるが起きるわけがない。


安らかな寝顔を見ているとちょっと悪戯心がわいて、びっくりさせてやろうとタカに近づく。



「前髪だけ長い…ぁ…三つ編みに…」


悪巧みをしながらタカの前髪を触って、

さぁ三つ編みだ!と実行しようとしたそのとき、


ブォン!ブォン!! ブォォオ!!


じれたライダーが自己主張するかのようにバイクをふかした!


「…!………!!?」


「…ん?……あ!?」



三つ編みをしようと顔を近づけていたアキは、

突然の爆音と目の前で開いた目にびっくりして固まった。


心臓が縮こまったと思ったら急に頑張りだして、タカに聞こえるんじゃないかと思う程バクバクいっている。


バッチリ目があったままのタカも、口が“あ”の形のままだ。



「…………お…おはよ」

「……あ、ああ…はよ…」



2人の間、15cm。

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あきゅろす。
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