◇LIQUID AND SOLID
帰巣本能と脚
ふらふらとしながら帰路につく。
気付けば道のど真ん中に立っていた。
しかし、その道がよく知った道だと気付いた瞬間、
心臓が凍った。
それは、実家への道だった。
帰巣本能とは恐ろしい。
あれだけ実家へは近づかないようにしていたのに、
体は勝手に15年住んだ家に帰っていたらしい。
もう3年たったのに、まだ忘れていなかったのか。
まだ3年しかたっていなかったのか。
寒いくらいなのにジワリと汗がにじんだ。
早く、早く帰ろう。
そうだ、かんたがまってる!
Uターンしてほとんど走っているに近い早歩きで立ち去る。
だけどだんだん何かに追いかけられているような気持ちになって、祐平は駆け足になっていた。
しかし、普段から運動していないせいか、極度に緊張しているからか、息がすぐに上がってきた。
「はあ、は…ッ、はぁ、はあ」
限界が近づいて、横っ腹が痛くなってきた。
自分の中であそこの曲がり角を曲がるまで、と終わりをつけて踏ん張る。
終わりは割とすぐに来た。
案外走るのをやめるとしんどくないものだ。
呼吸を整えながら歩いて体を落ち着かせる。
「祐平」
さっきまで歩いていた脚は、動かなくなった。
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