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◇LIQUID AND SOLID
3年生と持ち上がり


かんたの散歩も済ませて、学校へ行く。


今日は新任式だ。


離任式で出ていった先生に替わって入った先生を紹介する。


この時にクラスの担任と教科担当が発表される。

普通は新しいクラスをまだ知らないので担任発表はあまり意味がないんだけど、


僕は特進科で1クラスしかないから持ち上がりだ。

クラスもメンバーも去年と同じAのまま。

だから担任は発表されたらすぐわかる。


でも、クラスは何組だろう。とか、あの先生のクラスがいい。とか、あの子と一緒がいいなんてのは無いから、


別にワクワクとかドキドキとかも全く無い。


3年生になったのに全く新鮮味が無くて、進級した実感がない。


てくてくと学生がちらほらと歩いている道を進む。


中にはネクタイを友達に結んで貰っている子がいたりして、

ああ…新入生だなぁ。と思う。


四苦八苦してる様子がなんとも初々しくて、


少し気持ちが改まった。


「よし。いつも通り、いつも通り。」


駅で待ちぼうけしたのは無かったことにしよう。

あの日僕には約束なんて無かったんだ。


あの日はかんたに会うための日だった。



「おはようタカ。なんだか久しぶりな気がするね。」


思ってたよりずっと自然に声が出た。


「………ああ。そうだな。」



「今年も僕ら同じクラスだね。」


「…!そうなのか?」


「あ、そうか。タカは転入してきたもんね。僕ら特進クラスは一つしかないから、持ち上がりなんだよ。」



「…そうか。」


「よう。祐平。お前なんかいいことあったのか?なんか金曜日より気分よさそうだな。」


リョウがタカと僕の間に遮るように入ってきた。

「あ…リョウおはよう。そうだ!良い事といえば、僕犬を飼うことにしたんだ。」



リョウでタカが見えないけど、2人に向けて話しかける。


「かんたって名前にしたんだ!柴犬の子犬でね、すっごくかわいくて、食い意地がはってるの。」


「かんただって?それってヂブリのドドロに出てくるガキんちょの名前か」


「あーほんとだ。全然気が付かなかった!」


ちょっとした新発見に笑いあう。


良かった。いつも通りだ。




しかし、タカはその時、不機嫌そうに前を向いていて話を聞いている様子はなかった。





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あきゅろす。
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