◇LIQUID AND SOLID
リョウとビッグニュース
ついに僕は一人になった―――
いや、本当はもっと前から一人だったんだろう。
あれから母さんは夕飯を作り置きして帰っていった。
僕がだらだらと用意をすませて家を出たときには、
すでに時間は11時を過ぎていた。
学校について、教室のドアを開けると、一瞬だけクラスメイトの視線が過ぎる。
まるで検分だ。
学校とはいえテリトリーがあって、
それぞれのクラスには特徴的な空気が充満している。
たまに教科書を忘れた生徒にはとても入りづらい空気。よそ者はこの洗礼に耐えなければ教室に入れない。
僕はこのクラスの人間だったので、すぐに視線は外され、
付き合いが深い者からは挨拶が来る。
「はよっす祐平。社長出勤とはいい御身分だな。」
笑いながら肩をたたいてきたやつは富田一良。
かずよしという名前だが皆にはリョウと呼ばれている。
リョウはクラスのほとんどと話すが、フラフラとしていて決まったグループにはまらない。
大体ぼーっとしている僕の机に寄りかかって、
日常で起きた面白い話を聞かせてくれる。
いつも無表情でとっつきにくい僕にも話しかけてくれて、
クラスの調和をうまく保とうと日々奮闘するいいヤツだ。
正直、リョウがいなければ僕は爪弾きにされていただろう。
「寝坊だよ。それに遅刻回数ではリョウにはかなわないよ。」
「あんま褒めんなって。ところで今日はビッグニュースがあるぜ。」
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