◇LIQUID AND SOLID
不審者と盾
バートさんはとっても面白い人で、公園デビューは大成功だった。
「次の日曜日にまた会えますか?」
「会えるさ、勿論。約束なんてしなくても3日以内にまた会えるよ。私とユウの出会いはnecessityだからね。」
すらりと英語で発音されたけど、あまりにもネイティブで聞き取ることができなかった。
「じゃあ、3日以内に、どこかで。それと、ここら辺りに不審者が出てるらしいから気をつけて。」
バートさんはそういって帰っていった。
…帰る姿も優雅だ。あれが英国紳士というものか…。
ぼーっと、かんたと一緒にそのままバートさんが消えるまで見送っていると、
遠くのほうで黒い影がサッと動いたような気がした。
「えっ!?」
もしかしてさっきバートさんが言ってた不審者!?
…もしそうなら子ども達が危ない!
「すいません!子ども達の親御さんですか?さっきあちらの辺りで不審者らしき人影を見ました。危険かもしれないので今日はお帰りになった方がいいと思います!」
日陰のあるベンチで固まって談笑していた母親らしき人に話しかけた。
かなり大勢いて話しかけづらかったが、そんなこと考えてる暇なんかない。
「まあ、本当?」
「まあ君!帰るよ!」
「それって黒っぽい服を着て裏道の木陰でうろうろしてた人?」
「私も見たわ!やっぱり不審者だったのね。」
「怪しい動きしてたもの!たかしーっ!早くこっち来なさい!」
おしゃべりでざわざわしていたベンチは僕の呼びかけで10倍くらい騒がしくなった。
おかげで周りにぽつりぽつりといた親御さんにも騒ぎが伝わったようで、
公園から一気に人が消えていった。
「かんた、僕らも早く帰ろ。」
祐平は、かんたとの出会いをきっかけに、
どんどんと変わっていく。
溶けた心は固まって、
盾ができた。
かんたを守る、祐平の心の盾。
祐平の心の柱は2本になった。
ふいに現れた外国人、バートも支えになりつつある。
無意識に、祐平のタカへの執着は………。
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