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◇LIQUID AND SOLID
ペットショップと拳


どさっ…がしゃ…。


持ち手が伸びて細くなったビニール袋を手放す。


「………………。」

一人と一匹は無言でベッドへ向かい、性根尽き果てたように倒れた。


獣医さんに紹介してもらったお店は、確かにすごくよかった。


真剣にかんたの特徴を見極めて、どれをどうすればいいのか語ってくれた。


1時間にわたって。


獣医さん…僕にはもったいないお店でした…。


暖房が効いた部屋に頭がぼーっとなって、

最後の十分ほどの記憶がない。

なんだか言われるがままに商品を買ったようなきがする。


初め買うつもりだったエサ、おもちゃだけにはとうてい見えないほど膨らんだビニール袋が、

しなだれかかるように入り口の壁に倒れている。

手の平にはしっかりとビニール袋の痕が残っていた。


一直線に引かれたそれは鬱血したように赤黒く、指先の感覚はあまり無い…。


――――あぁ、携帯ショップにも行かないと…。今日は本当に忙しい土曜日だ…。


無理やり体を起こして、
ベッドから落ちるようにずるりと降りた。


かんたはそれでも起きないで昏々と眠っている。

妙ないびきをかく余裕もないほど疲れたみたいだ…。


かんたはかんたで大変だった。

いきなり目をカッと開かされたかと思ったら、


口の皮をびろーんと引っ張られて歯茎を観察される。


かんたも流石に嫌がって咬もうとして、かなりヒヤヒヤさせられた。


まぁそんな心配いらなかったようだけど…。


一見動物大好き、無殺生無害なおっとりした青年って感じの店員さんは、

咬もうとしたかんたの口にぐーをした拳を突っ込んで、

「咬もうとしたらこうするといいですよ。」


微笑みながら、さらに口の中にぐいぐい押し込んだ。


かんたは戸惑いながらあがあが言ってた…。



おいたわしや…。




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あきゅろす。
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