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◇LIQUID AND SOLID
かんたの春と夏の地獄


「―――あ、病院。」

そうだった…かんたは元ノラ犬だったから、

予防接種を受けさせるために動物病院につれていかないと…。


チラッとかんたの様子を見ると、必死にエサにかぶりついていた。


―――――――‐‐‐・・




きゃひーーーん…ひーん…ひーん…


ぶっすりと注射をうたれたとたんどこか間抜けな悲鳴があがった。


さっきまで獣医さんに懐いていた分ショックが大きいようで、


心なしか目がうるうるしているような気がする…。

体はぷるぷると震えて、しっぽはすっかり縮こまって足の下だ。


可哀想だけど、仕方ない。病気にならないため。かんたの為だ。

そう思いながら我慢していたが、


かんたがぷるぷるしながらもまだじっと獣医さんのことを見つめているのに気付いてしまって、


つい吹き出してしまった。


「ぶふっ!かんた…獣医さんのこと大好きなんだね〜。」


笑った瞬間獣医さんに吹き出したことがバレそうになって、慌ててかんたに話しかけてごまかす。

「本当ですか?いやぁ嬉しいな。かんた君は可愛いし、こんなに大人しい子は珍しいですよ。」


ニコニコと獣医さんが応える。


――――なに、かんたは猫かぶってるのか…。家では冒険大好き冒険野郎なのに…獣医さんの前だとしおらしくなるのかな?


それって――――


「どうかしましたか?」

「い、いえ!何も〜…。」


知らない間にニヤニヤしてたらしい。


かんたには可哀想だけど、これ以上ボロが出ないうちにペットショップへ行こう。


「あの。ペットショップでおすすめのお店ってありますか?かんたのご飯とか揃えてあげたいので…。」

「ああ、それならセミのコンビニの近くにあるショップがいいよ。」


「じゃあそこへいってきます。ありがとうございました。ほら、かんたも獣医さんにばいばいしな。」

かんたを抱いて無理やり足をつかんでばいばいさせる。

獣医さんも相変わらずニコニコと笑ってふりかえしてくれた。



道を歩くと、10mくらい続く垣根が見えてきた。
そしてその垣根の終点から覗くのがセミのコンビニだ。


あそこは夏になると地獄と化する。

セミのコンビニと呼ばれる所以、その名の通りセミが大量発生するのだ。

みんみん、つくつくぼうし、アブラ…


色々なセミが好き放題鳴いて声の判別なんかできないくらいだ。

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あきゅろす。
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