[携帯モード] [URL送信]

氷帝学園
俺様の言うとおり(跡部)

雲ひとつ見当たらない、真っ青な空。
それと同じく、真っ青なあたしの顔。

なんでかって?

それはついさっきの事。


 「お昼だお昼だぁーっ」


朝食を抜いたあたしのお腹は、4限のずっと前から空腹の音を鳴らしてた。

先に裏庭で待っているであろう友達の元へ、二段重ねの弁当箱と、買ったばかりの冷えたお茶を両手に向かっていた。

障害は、すぐそこに。


 「うっ……わあ!」


奇声と共に、視界は緑。
草の、青々とした緑を見て、状況が掴めなかった。

やっと自分が派手に転んだのだと自覚した時、頭上から怒りの込もった声がした。


?「おい、貴様…」

 「あっ、はい!すいませんっ」


躓いたその人の足の上から慌てて下りた、あたしの目の前に居たのは………


 「生徒…会長、さん」


跡部景吾。
テニス部部長。
俺様で女子のファン多数。

あたし……
なんてことを!


 「…あれ?お弁当は……
  あーっ!!ぐちゃぐちゃだ」


遠くに転がるそれは、中身が散らばり、食べられる状況じゃなかった。


跡「名字……」

 「はい!」

跡「おまえ」

 「あ!すいませんっ
  お腹空いてて、お弁当ばっか
  気にしてました。
  謝るのが先でした!」


焦るあたしに、跡部さんが言葉の先を遮るように首を振った。


跡「怪我はないのか?」

 「あ、跡部さんがクッションに
  なってくれたので…
  ってまた失礼なことを!」

跡「っくく。面白い」

 「へ?」


笑いかけた跡部さんの笑顔に、思わず赤面した時、雰囲気をぶち壊す腹の虫の鳴き声。


 「すっ、すみません!
  みっともないですね!」

跡「食うか?」

 「はい?」


成り立たない会話に、アホっぽい声を出してしまったことを少し後悔した。


跡「腹減ったなら、食えばいい。
  樺地がいなくて
  困ってたとこだからな」

 「えっ、跡部さんのを?」

跡「それ以外誰がいる?アーン」

 「…ありがとうございます」


裏庭の友達のことも忘れ、頭の中は跡部さんの事だけ。

サンドイッチに手を伸ばす跡部さんのオーラを、体の右側でびんびんに感じながら、足元をじっと見つめる。


跡「……食わねーのか?」

 「あっ、いただきます」


何かわからないけど、見たことない高級そうな食材がふんだんに、しっとりしたパンに綺麗に挟まれている。


跡「ふっ…うまいか?」


笑顔で言ったその言葉に答えようとして、振り向いた時。

ぐいっ

頬っぺたに触れた、細く長い、あたしなんかと比べ物にならないくらい綺麗な指。


跡「ついてた」


緊張で口がどこかもわかんないのか?
なんて言いながら、指を軽く舐めた。

その行為がひどく色っぽくて、思わずあたしは後ずさっていた。


 「あっ…あたし次体育でして…
  その、失礼しますですっ」


走り出そうとしたあたしの手を掴んだのは、勿論跡部さんの手。


跡「名字っ…!
  また、明日も来るよな?」

 「はいっ!光栄です!」


顔から火が噴き出しそうなのを隠そうと、大袈裟に返事をしてしまった。

跡部さんの顔を見るのがなぜか恥ずかしくて、掴まれた手が緩んだ隙にあたしは走り出した。

そういえば、なんであたしの名前を知ってるのかとか。
明日だって友達と食べる予定だったのに、どうしようとか。

頭はごちゃごちゃなのに、緩む口元は嬉しい証拠。




(来なかったらわかってるよな?)


[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!